ファイナンス 2023年3月号 No.688
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ファイナンス 2023 Mar. 43予算執行調査 20年間の歩み *11) 「平成22年度予算執行調査について」(ファイナンス平成22年10月号)ます。」*11と発言があったように、調査件数が100件の大台に乗ることとなりました(4月に83件、10月に17件の調査事案を公表)。件数だけなく調査内容についても大幅な充実・強化を図るよう、「行政経費等に係る府省横断的な調査」(行政経費等調査)や、「過去の予算執行調査のフォローアップ調査」といった新たな枠組みの調査もこの時初めて取り組んでいます(これらの調査の詳細は後述します)。さらに10月の調査事案公表時には、情報システム予算や独立行政法人の中期目標期間末の執行に関する調査を選定しています。イ  平成23年度から平成29年度 〜「調査の質の向上」を重視〜このように、平成22年度まで件数を伸ばしてきましたが、平成23年3月の東日本大震災発生時には調査方針を見直しています。それまで3~4月に実施していた事案公表を見送り、各府省等の繁忙度合い等を見極めつつ、対応可能な事案から順次着手することとし、65件(前年度から35件減)の調査を実施しました。以降、予算執行調査は件数の多寡ではなく、「調査の質の向上」を主眼に実施していくこととなります。例えば平成24年度調査からは、調査結果の分析等に当たり、外部有識者(専門家)の知見の活用を推進し、より深度ある調査の実施に取り組んでいます。また、実地調査を積極的に実施し、実際に予算の執行の現場に赴くことで、より実効的な予算の効率化に努めています。「調査の質の向上」を下支えするため、この頃から財務局の役割がより一層重要となっていきます。「財務局調査」「共同調査」(「(4)財務局の役割」参照)を合わせると、件数では平成26年度にピークを迎えました(令和4年度調査時点)。また、翌年度予算への反映額でも平成28年度調査の「水田活用の直接支払交付金」(東北財務局との共同調査)が▲296億円の反映となるなど、一定の実績を上げています。調査の実施だけでなく、調査の事案選定についても地域の財務局の目線を活用することで、現場の視点での案件の発掘も行っています。予算執行調査における財務局の役割に関しては、後ほど詳しく触れることにします。また、年度ごとの事案選定については、引き続き特別会計の事業も含めて予算の執行状況全般を選定の対象としています。例えば平成25年度調査では、被災地の地方公共団体の事務負担等に配慮しながら新たに東日本大震災特別会計で計上する復興関連予算に係る調査を2件実施しました。ウ  平成30年度から現在 〜中長期的な観点から〜平成30年度以降の事業経費調査においては、短期的な節減効果にとらわれず、制度の根幹に踏み込んだ検討を行うためのデータ収集や課題・改善方法の洗い出し等による問題提起など、財政制度等審議会や予算編成過程における議論等に資するよう、中長期的な観点から制度改革等につなげるための調査にも取り組んでいます(図4)。さらに平成30年度調査からは、行政経費等調査に関して、新たに各府省の会計実務担当者による検討の場を設けるなど、引き続き調査の質の向上に向けた取組も実施しています。しかし、令和2年度からは、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた対応を余儀なくされることとなります。調査事案の公表は3月下旬(3月31日)に行い、調査については対応可能なものから順次着手することとしたところ、調査結果の前半公表は8月31日と例年より遅れ、後半公表の一部は翌年1月と大幅に遅れました。また、5事案については調査の完了が困(コラム)予算執行調査等に係る連絡会議予算執行調査の実施及びPDCAの取組に当たっては、実際に予算の執行を担う各府省の協力が不可欠です。財務省では、財務省主計局長及び各府省官房長クラスをメンバーとした「予算執行調査等に係る連絡会議」及び財務省主計局総務課長及び各府省会計課長クラスをメンバーとした「予算執行調査等に係る連絡会議幹事会」を設置し、予算執行の適正化・効率化や予算執行調査結果の予算編成への反映の依頼等をしてきました。

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