ファイナンス 2023年3月号 No.688
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220年間の歩み  ファイナンス 2023 Mar. 41(図2)塩川正十郎元財務大臣発言録○ 大体、日本の社会の構成の中で、プラン・ドゥー・シーのシーの面は、どこの部門においても弱いんですね。(中略)ですから、このシー(平成14年2月20日 衆議院決算行政監視委員会)の面は、これはやはりみんなで考え直すときじゃないかなと思います。○ 行政側は予算を組む、そこまでは一所懸命やるんですけれども、(中略)どのように使われておるかというその行政効果というものに対して余り深い関心を持っていなかったということは事実でございまして、それが方々で無駄を生み、その無駄に対しまして、(中略)予算のまた編成しておるということが繰り返してまいりました。○ 主計局は予算をつけたらそれで終わりというのではなく、つけた予算の執行状況を現場に行ってちゃんと見て来い。それを次の予算編成にフィード・バックしろ。それで初めて財政当局としての責任を果たせるんやろ。予算執行調査 20年間の歩み(ファイナンス平成16年4月号「平成16年度予算編成における新たな取組みについて」)(平成14年7月1日 参議院行政監視委員会)*3) 「プラン・ドゥー・チェック・アクション(Plan-Do-Check-Action)」と並ぶマネジメントサイクルの1つ。Plan(計画)、Do(実行)、See(評価・見直し)の3つのプロセスからなる。*4) 「閣僚懇談会におきまして、私は、予算の執行状態について、現状を点検してくれということを言いました。その具体的なことは、歳出の大きな柱である社会保障関係、公共事業、地方財政等に関する予算が確実に、しかも迅速に執行されておるかどうかということです。」(平成13年5月18日塩川元大臣閣議後記者会見における発言)*5) 平成14年9月3日塩川元大臣閣議後記者会見における発言。(1)調査の創設経緯〜予算の質の向上への道のり〜ラッシュアップを重ねながら、1,200件を超える調査を着実に実施してきたところです。本稿では、予算執行調査のこれまで20年間の歩みを中心に振り返りつつ、このほか、近年の調査についても触れていきます。予算執行調査は、塩川正十郎元財務大臣(在任期間:平成13年4月26日~平成15年9月22日)の発案により始められたものです(図2)。平成13年に財務大臣に就任した塩川元大臣は日頃から、いわゆる「プラン・ドゥー・シー(Plan-Do-See)」*3の「シー」を充実させることの重要性を強調していました。調査開始前年度の平成13年度には既に、個別事業予算(公共事業等)の執行状況について各地方の財務局を活用して調査するよう指示を行っています*4。調査名を掲げて正式に実施したものではありませんが、これが現在の「予算執行調査」の先駆けの一つと言えます。平成14年度には、前年と同様の調査を正式な「予算執行調査」として制度化しています。塩川元大臣による「予算が効率的かつ効果的に執行されているかを十分に把握することが重要であり、そのために体制の強化を図る」(平成14年2月8日閣僚懇談会)という発言のとおり、同年4月1日には調査計画の策定等を行うため「予算執行評価会議」が主計局に設置され、初年度は43事業の調査を行うこととなりました。同年6月21日に31事案、9月3日に12事案の調査結果が公表されました。例えば、単価を調査したところ「学校建築について校舎の建築基準が民間の建物と違うことが単価に影響している」「政府米の保管単価に競争原理が十分に働いていない」ということが分かりました。このように、国と民間の単価にかなりの乖離があることなどが判明し、翌年度の予算編成に向け「非常に参考になる」*5調査結果を得ました。実際に、翌年度の平成15年度予算には徹底した単価の見直し等によりこれらの調査結果を的確に反映し、総額189億円の反映額となるなど、「プラン・ドゥー・シー(Plan-Do-See)」の「シー」を強化する取組は初年度から一定の成果を果たし、財政当局として掲げる「予算の重点配分と効率化」「歳出の構造改革」に資する結果を得ています。調査2年目となる平成15年度には特別会計事業を重点的に取り扱うこととし、18特別会計20事業を調査対象として選定しました。翌年度(16年度)予算への反映額としては、一般会計分含め51事案で492億円(歳入反映額26億円を含む)と、前年度の倍以上の反映額を計上しています。

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