ファイナンス 2023年3月号 No.688
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(参考7)令和5年度当初予算の歳出(性質別)*28) 要望の様式については所管省庁ごとに異なり、地方自治体が要望時点で把握している今後の事業費まで含んで提出するものもある。*29) 国土強■化対策債など、国補正予算に伴う地方債については充当率が100%であるため、当該年度の一般財源を用いることなく予算措置が可能。*30) 例えば、インフラ整備先進県の要望額が想定よりも下回った場合、後進県に対し、要望額以上の予算が措置される可能性がある。維持補修費・繰出金等(6.1%)378億円歳出6,138億円積立金(0.6%)37億円投資的経費(16.9%)1,036億円人件費貸付金(13.8%)846億円(21.5%)義務的経費(36.4%)2,234億円政策的経費(63.6%)3,904億円補助費等(26.2%)1,608億円1,320 億円公債費(11.7%)717 億円扶助費(3.2%)197 億円 38 ファイナンス 2023 Mar.年度事業をN年度春の時点から国へ要望します。つまり、公共事業関係経費はN+1年度予算編成方針が策定され当初予算案の高さが決定されるより以前に、既に国の内示待ちの状態になっています。仮に国の補助を受けて行う公共事業全体の当初予算額を100億円とします。まず、県の社会資本整備計画に基づき必要な事業量を確保すべく事業所管部の局単位で所管省庁へ要望を提出しますが、N+1年度当初予算で措置されるであろう額(100億円)を下回ることのないよう事業毎に過去の内示率等を基に要望がなされ、結果的に全体の予算額を上回った要望額(例えば200億円)となるのが近年における本県の実情です*28。国からN+1年度予算の内示を受け、事業総額が決定するのがN年度末ですが、ここで仮に120億円相当の事業が内示された場合、当初予算で措置されていなかった20億円についてはN+1年度の補正予算で措置する必要があります。加えて、国土強靱化事業といった補正予算についても要望があり、これらに関しても地方債を財源とする追加の予算措置を行います*29。このこうした本県の要望プロセスにおける問題点は、公共事業の当初予算額が実質的な意味を失い、どの程度の予算措置がなされるかは各要望部局及び国の内示率に依存して決定されるという点です。国の内示率は他律的*30であり、少なくとも事業要望の適切な管理がなされなければ、意図せず県債残高が積み上がり、後年度の公債費が増加していくことになりかねません。県債残高の増加というのは、裏を返せば県の資本形成の増加であり、これは県民の利便性を高めるとともに、便益を受ける世代で公平に負担を分かち合う意味でも、それ自体が問題ということはありません。ただし、その事業ペースを管理する体制を備えず野放図に事業量を拡大すれば、公債費負担に財源を割かれ、必要な政策を実行することができなくなります。この状況を打開する一つの方策として、財政当局も含め公共事業の事業量・要望額を一元的に管理していくことで、長期的視野を持って起債額をコントロールしていくことが考えられます。方策(3) 既存事業の精査最もイメージしやすいのが既存事業の精査です。ただし、本県の財政構造を見ると義務的経費(人件費・公債費・扶助費)が3分の1以上を占めることに加え、政策的経費の中でも義務的性格のある社会保障関係経費や維持修繕費、目的の決まっている中小企業制度融資貸付金のほか、公共事業費をはじめ一足飛びに減額することが適切でない費用も多くあります(参考7)。また、投資的経費はその多くが起債によって措置されることから、これを削減したところでたちまち当年度に十分な一般財源を生み出すことはできません。本県はこれまで、秋に公表する「予算編成方針」において既存事業の一部を対象にシーリングを実施してきましたが、毎年の捻出額は1億円前後にしかなりません。また、新規事業の予算要求は青天井で受け付け、査定で削減すべき額の目安も存在していません。その結果、それ以上に新規施策が要求され事業化されるため、政策的経費の予算規模は年々大きくなる方向で推移しています。これについてはシーリングを含め予算編成の方法を見直すことや、既存事業についてPDCAサイクルを徹底することで、事業の実績や効果を踏まえた予算査定につながるよう改善してく等の方法が考えられます。

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