ファイナンス 2023年3月号 No.688
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(参考4)公債費償還財源確保スキームのイメージ(参考5)財調・県債基金残高の見込みR6112新たな試算 新たな試算 後年度の金利節減効果等を比較し、今年度は繰上償還を実施せず、借換債の発行抑制を行った。R14R7▲5▲120▲250▲375▲507▲642▲781▲941*23) 和歌山県では従来、2月補正予算において、地方財政法第7条に規定する繰上償還を実施してきた。これは、満期到来前に残債を完済するものである。*24) 和歌山県は過去に、20年間で償還すべき県債(臨時財政対策債*24)について、10年目の借換時に、その償還期限を30年間に延長する措置を行った。当時、見合いの交付税は20年間での償還を前提に措置されていたため、この結果、11年目〜20年目までは償還額よりも交付税額の方が多く歳入されることとなり、ある種の財源対策として機能していた。当然、21〜30年後に償還すべき残額については交付税措置がなされないため、今後はこの「先食い」のツケを払っていく必要がある。これが令和16年度までの間、合計193億円程度存在するが、今回の借換債の発行抑制は、その一部を負担軽減するための措置という位置付けでもある。R4年度2月補正において積立て(~R8)83.5億円+38+53さらに深堀り公債費769億円822億円R6年度R7年度19.5億円公債費臨時対策19.5億円基金+52+39678億円717億円R4年度R5年度「財政見直し元年」R5(財源確保スキーム実装前)209(財源確保スキーム実装後)209164公債費償還財源確保スキーム公債費増加分の2分の1に相当する額を公債費臨時対策基金から取り崩す。残り2分の1は予算編成過程において財源を捻出することで財政負担を軽減。R8R912710345R7捻出分R6捻出分R6捻出分860億円R8年度R8捻出分R7捻出分R6捻出分予算の賢いやりくりなお残る財源不足については、賢くやりくりして対応例)・既存事業の精査や予算の組替え・国への公共事業の要望を事業部局と財政部局が一元的に管理・有利な地方債の活用(単位:億円)R10R11R12R13▲8▲68▲131▲198▲286 36 ファイナンス 2023 Mar.において財源捻出することとしています。これらを併せて「公債費償還財源確保スキーム」として、毎年の公債費増加分の財源を確保していくこととします(参考4)。次に、借換債の発行抑制について説明します。県債は通常10~30年で償還します。しかし、和歌山県の場合、20年債/30年債であっても契約上は10年で満期が到来します。したがって、10年毎に一括で残債の償還を終え、残存する10年/20年分は新たに借り入れることで、実質的に償還年限を延長しています。今回の措置は、この満期到来時に行われるはずであった新たな借入(借換)を実施せず、その財源を一般会計から県債管理特別会計へ繰り出すものです*23。借換債の発行抑制に用いた財源は62.0億円ですが、これは向こう10年間、公債費(元利)を毎年5~6億円ずつ低減させ、その後の10年間を加えると、全体で65.6億円の公債費抑制効果を持ちます*24。公債費償還財源確保スキームの効果「財政見直し元年」である令和5年度からプラン最終年度の令和8年度までの間、前述の公債費償還財源確保スキームを着実に実施した場合、財政収支見通しは幾分か改善します(参考5)。これによって、令和7年度に底を突くと試算された財調・県債基金は、枯渇時期が令和10年度まで先送りできる見込みです。それでも3年の延命に過ぎないのは、このスキームだけでは前年度からの公債費増加分及び過年度財源捻出分しか対応できないからです。したがって、なお残る財源不足については時間を稼いでいる間、予算を賢くやりくりすることでさらに収支を改善させていく必要があります。予算の「賢いやりくり」の例として、例えば、(1)有利な地方債の活用、(2)国に対する公共事業の要望の一元管理、(3)既存事業の精査や予算の組替え等が挙げられます。方策(1) 有利な県債の活用一言でいえば、還元率の高い「お得な買い物」をすることです。県の借入金である県債には、返済年度に国から一定のキャッシュバック(交付税措置)のある銘柄もあります。最も典型的なものが臨時財政対策債です。臨時財政対策債は地方交付税の財源不足を補う

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