ファイナンス 2023年3月号 No.688
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0 *17*18*19また、県債残高の増加に伴い、県債償還(毎年度の借金返済)に必要となる公債費は今後、確実に増加していきます。令和5年度当初予算で717億円ですが、令和14年度には894億円にまで増加します。このうち交付税措置を除いた実質的な公債費は225億円から436億円となり、10年で2倍近くに膨らむ見込みです(参考3)。なお、仮に調達金利が1%上昇した場合*20、令和14年度には利子負担がさらに約33億円(2%上昇した場合、約67億円)増加することになります。*21ファイナンス 2023 Mar. 35和歌山県財政の現状と課題(参考2)県債残高と将来負担比率の推移*17*18*19全国平均(参考3)公債費の推移*21(億円)11,00010,50010,0009,5000H29H30R1R4R3R2(実績)(見込み)*17) 令和3年度までは決算の数値、令和4年度以降の数値については令和4年度2月補正後の数値を反映した見込み額(借換債の発行抑制による公債費の増加を除く)。*18) 令和4年度以降の将来負担比率は、令和2年度の標準財政規模により算定。*19) 都道府県を財政力指数(平成30年度〜令和2年度)によって分類した場合の和歌山県と同グループ(大分県、山形県、岩手県、青森県、宮崎県、佐賀県、鹿児島県、長崎県、徳島県、秋田県)の平均(沖縄県を除く)。*20) 令和5年度に調達金利が上昇し、令和14年度まで同率の幅が維持された場合。*21) 令和3年度までは決算の数値、令和4年度以降の数値については令和4年度2月補正後の数値を反映した見込み額(借換債の発行抑制による公債費の増加を除く)。*22) なお、県は財政に与える長期的な影響については、プラン策定時から「楽観視できない」との認識を示している。10,82210,158900800700600500400300200100H29H30R1R2R3R4R5R6R7R8R9R10R11R12R13R14R5R6R7R8R9R10R11R12R13R1410,967250230210190▲9411501300(%)270170(億円)【交付税措置額】公債費のうち、後年度に国から財政措置される額【実質的な公債費】公債費のうち、交付税措置額を除いた額・・・県債残高・・・将来負担比率219%さらに基金の不足類似団体平均717255和歌山県256%894436財政危機警報こうした認識の下、和歌山県は令和5年2月、「財政危機警報」を発出し、令和5年度を「財政見直し元年」と位置付けました。「財政危機警報」は、いわゆる「財政非常事態」を宣言するものではありませんが、現状を放置すれば財政危機に直面しかねないという認識を県民と共有し、実際の危機に陥る前に警鐘を鳴らすものです。高齢化の進展に伴い増加する社会保障関係経費や過年度に発行した県債の償還のため今後確実に増加していく公債費を賄い、さらには県内の課題解決のための新たな財政需要にも機動的に対応することができるよう、財政構造を持続可能なものへと転換していく必要があります。公債費負担軽減措置和歌山県では、令和4年度2月補正予算において、後年度の公債費負担軽減のための措置を講じました。具体的には、税収の上振れや地方交付税の再算定等で生じた余剰財源を活用し、(1)公債費臨時対策基金の設置(83.5億円)及び(2)借換債の発行抑制(62.0億円)を行っています。このように、和歌山県の財政状況について改めて分析したところ、物価高騰や金利上昇等を受けた歳出増等により、財調・県債基金が令和7年度にも枯渇するという試算結果となりました。また長期的にも、社会保障関係経費や公債費が今後増加を続けることで財政収支を悪化させていく可能性が改めて浮き彫りになりました*22。まず、プランの終期年度である令和8年度までの公債費負担を軽減するため、臨時の基金(公債費臨時対策基金)を新設しました。これは、前年度当初予算からの公債費増加分の2分の1に相当する額を取り崩し、公債費償還財源として活用するための基金です。公債費の増加分を全て賄うためには残り2分の1相当額の財源捻出を要しますが、これについては予算編成過程

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