ファイナンス 2023年3月号 No.688
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ファイナンス 2023 Mar. 33 和歌山観光PRシンボルキャラクター *1) 国の財政において、バブル経済が崩壊した平成2年度を境に歳出と歳入の差が広がっていった状態を「ワニの口」に例えてこのように表すことがある。*2) 地方六団体の1つである全国知事会においては、新型コロナや物価高騰への対応のため、国による財政措置を要請している。*3) 和歌山県「財政危機警報」(令和5年2月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010400/d00212473.html*4) 和歌山県「和歌山県財政の現状と課題」(令和5年2月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010400/d00212473_d/■l/genzyoutokadai.pdf*5) 和歌山のご当地グルメの1つに和歌山ラーメンがある。和歌山ラーメンについては本誌(令和4年12月号)に掲載された「紀州名物「和歌山ラーメン」を味わう」を参照されたい。https://www.mof.go.jp/public_relations/■nance/202212/202212d.pdf*6) 国土交通省「道路統計年報2021」(令和2年3月31日時点)*7) 和歌山県「新中期行財政経営プラン」(令和4年3月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011700/d00210105_d/■l/shinkeieiplan.pdf*8) 年度間の収支不足を補うために活用される財政調整基金と県債償還のために活用する県債管理基金は、県税収入等の動向に応じて財源不足を補う財源調整的な役割があり、「貯金」のような役割を果たしている。「わかぱん」和歌山県財政課長 庄中 健太和歌山県の特徴皆さんは和歌山県がどんな所かご存じでしょうか。和歌山県は紀伊半島南西部に位置し、県土の7割以上が森林で覆われています。「近畿のオマケ」と自虐的本稿における意見は筆者個人の見解であり、所属する組織を代表するものではありません。我が国の財政が危機的状況にあることは叫ばれて久しいですが、社会保障給付費の増加に加え、度重なる「異例の事態」への対応により、依然として開かれた「ワニの口」*1は閉じる気配を見せません。膨れ上がる当初予算、赤字国債を「財源」に行われる異例の規模の経済対策・コロナ対策等、他に類を見ぬ放恣な財政運営が行われているように感じます。翻って、地方財政の現状はどうでしょうか。国による大規模な経済対策等に伴い、地方交付税以外にも多額の国庫支出金が歳入され、ここ数年の財政規模は膨れ上がっています。では、地方はこうした国の大規模な予算措置を歓迎しており、補助金が貰えてハッピーかというと、必ずしもそうではないかもしれません。当然、それぞれの自治体により状況も異なりますし、捉え方も人それぞれですが*2。とまれこうした視点も踏まえ、ここでは筆者の属する和歌山県を取り上げ、今般発出された「財政危機警報」*3と併せて県財政の現状と課題*4をお伝えしたいと思います。に呼称されることもありますが、実際に足を運べば豊富な観光資源に恵まれた魅力あふれる地域であることが分かります*5。ただし、インフラ整備の観点では遅れが目立ち、道路改良率が58.5%に留まるなど、全国(77.5%)や近畿府県(70.9%)と比較して後進県といえます*6。また、その地形的特性ゆえ土砂災害や風水害が起こりやすく、将来は南海トラフ地震による甚大な被害も想定されていることから、防災・減災対策は最優先で行っていく必要があります。加えて、人口に占める高齢者の割合が3割を超え、26年連続で人口減少を記録するなど、高齢化の進展が顕著な県でもあります。こうした中で、物価高騰を始めとする新たな社会課題に対応し、子育て支援やGX・DX等の政策で国と歩調を合わせつつ、引き続き県民の生活を支え、産業を守り、また自然災害にも備えていく必要があります。今後10年間の財政収支見通し和歌山県は令和4年3月に策定した「新中期行財政経営プラン」*7(以下「プラン」)において、令和8年度までの5年間の財政収支を試算しています。プランによると、策定時209億円であった財政調整基金及び県債管理基金*8(以下「財調・県債基金」)の合計残高は、令和8年度当初予算編成後には139億円となる見込みでした。その上で、財政運営の目標として、令和8年度の両基金の合計残高を150億円程度維持することとしています。~財政見直し元年~和歌山県財政の現状と課題

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