ファイナンス 2023年3月号 No.688
10/106

写真 6 対談風景(右が古市憲寿さん)古市憲寿さん 「10年後どうしているか?」という自分の未来について考えることはありますが、社会についても想像しながら未来を考えるという視点を持っている人は少ないという感じがします。日本の未来を想像するのは難しいですが、財政も含めて明るいものになって欲しいです。原田広報室長 最後に、財務省がわかりやすい発信をしていくために必要なことについて、アドバイスをいただければと思います。古市憲寿さん 他の省庁だと「このような政策・サービスを始めます」としてアピールをしやすいと思いますが、財務省の広報はなかなか難しいところがありますよね。人間が直接伝えると生々しすぎるので、漫画やVTuberといった形で擬人化すると上手くメッセージが伝わることもあるかもしれません。また、人が顔を出すことにリスクがあることも考えるとキャラクターが代弁してくれるのは一つの手だと思います。その上で、財務省の中にいる方々の「本音」が聞ける機会が増えて欲しいですね。原田広報室長 本日はお集まりいただきありがとうございました。イマの財政状況、社会保障の状況などの話から、未来に関する話まで、いろいろなお話が聞けました。また次回、同じようなテーマでお話を聞ければと思います。日本の未来について財務省についておわりに 6 ファイナンス 2023 Mar.ときに、当たり前のように子どもがほしい、と思う好循環が出来上がっています。また、フランス人・フランス社会が子どもに優しいというのも感じました。フランスではバリアフリーが日本ほど普及していませんが、ベビーカーを押していると階段で周りの人が我先にと手伝ってくれますし、仮に公共の場で子どもを邪魔者扱いする人がいても、その人に文句を言って味方になってくれる人たちが必ず現れます。さらに、フランスの中学・高校・大学には偏差値がないですし、塾に通う習慣もないので日本で家庭の教育費支出のかなりの部分を占める塾代の出費がありません。教育費がかかりすぎるというのであれば、受験とか学校外教育をどうするかの問題は避けて通れないと思います。ちなみに、充実しているとよくいわれるフランスの子育て予算ですが、税・保険料で財源をしっかり確保しており、借金に頼らない黒字運営となっています。古市憲寿さん 未来予測は非常に難しいですが、その中で唯一信頼できる予測は、人口推計に基づいたものだと思います。堺屋太一氏が1976年に出版した近未来小説『団塊の世代』は、かなり正確に高齢化する日本を予測していました。未来を見据えた政策作りをする上で工夫できるようなことはありますでしょうか。神野室長 未来を考えて今の政策に活かしていくことが重要です。「フューチャーデザイン」という未来の人の立場に立って、現在の政策を考える手法に関心を持っています。岩手県矢巾町で水道施設の更新の際に、仮想将来世代と現代世代とグループを二つにわけて議論し、その結果、水道料金の値上げを決めたという実例があります。財務省としても、審議会の資料として紹介するなど注目しているところです。大沢補佐 未来を担う若者も、18歳までは投票ができません。だから、彼らの将来のことも考えながら、今のシステムが老朽化している部分、ほかの国に比べて遅れている部分を改革していくのが今を生きる私たちの世代の役目だと思っています。

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る