ファイナンス 2023年2月号 No.687
92/106

86420*21) IMF(2022a)*22) イオンモール3号店の一部は2022年12月15日に先行オープンしている(出所:イオン株式会社(2022))。*23) JETRO(2022a)(2022b)約170%に達するなど、借手が返済に窮した場合等に、経済の足を引っ張る懸念があるとされています*21。金融面の課題としては、米ドル中心経済からの脱却が指摘されています。カンボジアでは、現金流通量の約90%が米ドルとなっており、自国通貨リエルの流通量が少ないため、金融政策の自律性に欠け、中央銀行であるカンボジア国立銀行は主に預金準備率の上下による流動性のコントロールで対応しており、緊急時の金融調節手段の乏しさが課題となっています。こうした中、カンボジア政府は「脱ドル化」を模索しており、公務員給与のリエル建て支払いや、市中銀行からカンボジア国立銀行への少額ドル紙幣の持ち込みに手数料を課すといった施策を打ち出してきました。また、自国通貨の強化等を目的として、デジタル通貨「バコン」を2020年10月末より世界に先駆けて運用開始しており、これには日本のソラミツ株式会社がブロックチェーン技術を提供する形で協力しています。バコンは普及する途上にありますが、依然として民間企業では給与の支払いも含め米ドルが広く利用されており、家計消費においても米ドル決済が中心となっています。カンボジア国立銀行は、経済の混乱を避けるため「脱ドル化」を緩やかなペースで進める意向であり、「脱ドル化」には時間がかかると見られます。日カンボジア関係について見てみると、近年、日本企業のカンボジアへの進出は拡大しており、日本人商工会の会員数は2010年末の50社から、2021年には270社まで増加しています。最近では、イオン株式会社によるイオンモール3号店*22や、住友電装株式会社による住友電装第3工場等が建設されるなど、投資拡張の動きが続いています。また、イオン株式会社は、新たにロジスティクス関係を担う会社として、AEON MALL(CAMBODIA)LOGI PLUS CO., LTD.を設立し、南部シハヌークビル港経済特区内の約3万平方メートルの敷地に保税倉庫を建設、2023年第2四半期から稼働開始を予定しており*23、原料調達や出荷のリードタイム短縮、効率的な供給網の構築につながることが期待されています。日本は主にJICAを通じたODAによりカンボジアの開発を支援し続けており、シハヌークビル港の整備や架橋建設による物流円滑化促進、CJCCによる起業家の育成や日系企業とのマッチングといった産業人材育成支援等を実施しています。また、上水道整備や病院整備等を通じた生活の質向上にも貢献しています。カンボジア政府は地理的優位性を活かし、ASEANの中の自動車産業やエレクトロニクス産業のハブになりたいと考えており、日系製造業の誘致に積極的であると言われています。こうしたことから、今後もカンボジアと日本の関係は深まっていくと見られ、カンボジアへの支援は中長期的に日本企業にも裨益することが考えられます。(出所)ADBより筆者作成図表8 カンボジアの実質GDP成長率の推移(%)10▲2▲4▲620107.37.47.16.0農林水産業電気・ガス実質GDP成長率鉱業建設業2011201220137.17.07.07.0製造業サービス業20142015201620177.56.83.0▲3.12018201920202021*21*22*23 88 ファイナンス 2023 Feb.

元のページ  ../index.html#92

このブックを見る