ファイナンス 2023年2月号 No.687
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*18) カンボジア国内の中小企業数約50万社に対し、SME Bankの顧客数、CGCCの信用保証件数はそれぞれ、1,701社(2021年12月時点)、824件*19) WBが発表している世界ガバナンス指標によるとカンボジアは「汚職の抑制(Control of Corruption)」の項目が、ASEAN10か国の中で最も低い(2022年10月末時点)となっている。状況にある。*20) IMFは2022年12月に公表した「STAFF REPORT FOR THE 2022 ARTICLE IV CONSULTATION̶DEBT SUSTAINABILITY ANALYSIS」において、「Cambodia remains at low risk of external and overall debt distress under the Low-Income Countries Debt Sustainability Framework(LIC-DSF).」と評価(IMF(2022a))。PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 16 SME Bank等が入居するMEF Business Development Centerの外観ファイナンス 2023 Feb. 87る推進が重要と考えられます。カンボジア政府は、中小企業の金融アクセス向上のため、2020年に政策金融機関であるカンボジア中小企業銀行(SME Bank of Cambodia(SME Bank))を立ち上げました。SME Bankは、カンボジア政府が優先的な支援対象先と位置づけているセクター(観光業等)に対して、カンボジアの民間金融機関との協調融資等を行っています。また、不動産担保を用意できない中小企業への融資を推進すること等を目的に、2021年には先述したカンボジア信用保証公社(CGCC)を設立しました。CGCCは、金融機関の融資に信用保証を付けることによって中小企業の資金調達を支援しています。4.おわりに*20カンボジア経済が安定的に成長し、持続的に発展していくためには、本稿で述べた様々な課題に対処していく必要があると思われますが、その中でも経済成長のドライバーになりうる中小企業の発展と、そのための金融アクセスの改善に向けた取組みは、喫緊の課題になっていると考えられます。財務総研では、2003年以降、ベトナムやマレーシア等の中小企業の資金調達環境の改善のために、各国の政策金融機関に対して中小企業金融支援を行ってきましたが、今後も、カンボジアを始め各国の実情に応じて、知的支援の取組みを通じて、その発展に貢献していければと考えています。SME BankやCGCCは設立からまだ間もないため、融資や信用保証の件数は未だ少数にとどまっていますが*18、カンボジア政府の政策による後押しにより、今後さらに活動が拡大していくものと見込まれます。これらの政府系機関は今後、中小企業の金利負担の削減や、不動産の担保を提供することができないため資金調達が難しい中小企業に対する資金供給といった役割を担っていくことが考えられます。政府系機関は、効率的な経営や高いガバナンスが求められることから、これらに対処しながら、中小企業に対する支援を実施する体制を整えていく必要があると考えられます*19。コラム:カンボジアの債務・金融情勢、日カンボジア関係カンボジア経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により個人消費や外需、観光関連産業が落ち込んだことを受けて、2020年の実質GDP成長率は前年比▲3.1%となったものの、政府支出の拡大や財輸出の回復等を背景に、2021年は前年比+3.0%とプラス成長に転じました。今後の経済見通しは、IMF(2022年12月時点(IMF(2022a)))によると、観光業の回復等を背景に、2022年は前年比+5.0%、2023年は+5.4%と回復が続くと見込まれております。その一方で、中国等主要な経済大国の状況やインフレ、民間債務の拡大等が、経済の下振れリスクとして指摘されています。カンボジアの政府債務残高は、2022年末で名目GDP比36.8%(IMF推計)と抑制されており、IMFは全体的な債務リスクは低いと評価していますが*20、民間債務については、ここ数年、与信の伸びが名目GDPの伸びを上回って推移しており、2021年末には民間セクターへの与信残高が名目GDP比

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