ファイナンス 2023年2月号 No.687
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財務総合政策研究所 総務研究部 国際交流課 研究交流係長 井山 まりな同 研究員 町田 孝陽*1) 我が国と社会的・経済的に密接な関係にあるアジア地域を中心とした開発途上国の財務省等の若手幹部候補生に対して、我が国の財政・経済に関する知識・経験の提供等を行うことにより、参加各国の人材育成を支援することを目的に、1992年以降実施。*2) 本稿の意見に係る部分は、全て執筆者の個人的見解であり、財務省及び財務総研の見解ではないことをお断りする。また、紹介する経済データ等は、執筆時点での情報である。*3) カンボジアの一人当たり名目国民総所得(GNI)は1,550米ドル(2021年時点。出所:WB)。WBはGNIが、1,086米ドル〜4,255米ドルの国を「低位中所得国」、4,256〜13,205米ドルの国を「上位中所得国」、13,205米ドル以上の国を「高所得国」と定義(WB(2023))。*4) SERC(Securities and Exchange Regulator of Cambodia)(2022)*5) Khmer Times(2022)(出所)IMF図表1 ASEAN諸国の一人当たり名目GDP(2021年)シンガポールブルネイマレーシアタイインドネシアベトナムフィリピンラオスカンボジアミャンマー0.440.370.360.250.170.123.261.140.72(万米ドル)7.28 ファイナンス 2023 Feb. 83161.カンボジアの経済情勢カンボジアは、建設業や観光業、縫製品を中心とす財務総合政策研究所(以下、「財務総研」)では、アジアの開発途上国に対して、財政経済セミナー*1や中小企業金融支援等の知的支援を実施しています。こうした支援を効果的・効率的に行う観点から、支援の対象となり得る国の政府機関との面会や専門家へのヒアリングを通じて、その国の経済状況や財政・金融情勢の現地調査を行っており、2022年10月にカンボジアで現地調査を実施しました。今回のPRI Open Campusでは、現地調査を踏まえ、カンボジアの現在の経済情勢や発展に向けた課題について、特に中小企業を取り巻く金融環境に着目しながら「ファイナンス」の読者の皆様に紹介します*2。る輸出の拡大等を背景に、2010-2019年にかけて平均7.0%の実質GDP成長率を達成してきました。しかし、一人当たりGDPはASEAN諸国の中でもまだ低い水準となっています(図表1)。世界銀行(WB)はカンボジアを低位中所得国と位置付けており*3、カンボジア政府は2030年までに上位中所得国に、2050年までに高所得国になることを目指しています。こうした中、カンボジア政府は2022年11月に「National Policy Framework on Productive Economy 2022-2035」を発表し*4、生産、サービス、貿易等の面でカンボジアの競争力を改善し、高付加価値経済を目指すとしています*5。カンボジア経済の産業構成を見ると、名目GDPに占める鉱工業の割合は増加しつつあるものの、農林水産業が24.3%と未だに高い水準にあり、産業高度化の途上にあります。また、鉱工業のうち製造業についカンボジアの経済情勢及び 中小企業金融の現況について

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