ファイナンス 2023年2月号 No.687
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*44) 1980年代からの日本のアジア進出が成功した理由について、それを支えた日本企業の方から、「当時のアジア各地には、第2次大戦の関係などから現地に深く入り込んだ日本人がおり、彼らの力が大きかった」と聞いたことがある。その意味では、ここで記載したアプローチは、このような人としてのつながり(アジア深く入り込んだ日本人及びそれら日本人と日本企業との関係)を意識的に作り出していこうとするものとも言える。 82 ファイナンス 2023 Feb. 4 結語いかがだっただろうか。アフリカについて「ガバナンスが弱くビジネスに向かない」という意見は、既に過去のものであり、日本企業も多く活動するアジアの国と同程度やさらによい国も存在する。人々の発展しようとの意思は非常に強く、そうした意思の実現として、民間主導のインフラ開発やスタートアップが興隆しているほか、その成長性を見越し、世界から資金流入が増加しつつある。そうしたアフリカにおいて、日ギーの大消費地になるが、太陽光パネルにしても、蓄電池にしてもアフリカで作れないのか」「アフリカの農業の温暖化ガス排出は世界的に見ても少ないが、カーボン・マーケットを通じてアフリカの農家の所得を増やすことはできないか」など、多くの相談を受ける。アフリカの人々の日本に対する技術面や資金面での期待は大きく、多くの日本企業の方も色々な話をアフリカの人々から持ち掛けられるのではないかと思う。アフリカの地場企業や起業家からの「〇〇事業を立ち上げたい」といった話の場合もあれば、投資先の企業から「〇〇との社会課題を解決しないとビジネスが成り立たない」といった相談の場合もあるのではと思う。そうした際、私自身は、例えば、前述の太陽光パネルの話について「シリコン型のパネルの生産であれば、中国との競争にさらされるから日本企業には難しい」として話を終わらせるのでなく、「次世代型の太陽光電池であればどうだろうか」「再生可能エネルギーにつき、アフリカでより大きな付加価値を生み出したいということであれば、蓄電池ならパネルよりはまだ可能性があるかもしれない」などと提案してみたりしながら、一緒に考えてみることを心掛けるようにしている。それにより何かしらの解に辿り着けばラッキーであるし、辿り着かなくても、その人とのつながりができるかもしれず、将来思いがけないリターンがあるかもしれないのだ*44。特に社会課題に関わる相談の場合には、裨益する人が多い可能性があり、新たなビジネスになっていくかもしれない。本も、従来からの資源関係のビジネスだけでなく、農業・流通・通信などのアフリカの人々の生活に根差した分野へ投資等により関与しつつあるほか、アフリカで起業する日本人も増えつつあるなど、アフリカと日本がともに成長する基盤作りが始まりつつある。しかしながら、投資や活動の規模という観点からみれば、日本のアフリカでの活動はまだまだ小さい。日本のアフリカにおける実績や認知度が必ずしも高くないことを踏まえれば、仮にアフリカの成長から裨益したいと考えるならば、今すぐにでも、日本がアフリカの人々に寄り添い、自らも知恵を含めたリソースをもって課題解決に貢献するべくアクションを開始することが重要である。そうできれば、アフリカの人々の生活に必須のものごとに自ずと関与していくことになり、今後のアフリカ市場から永続的に裨益することができるのではないかと思う。具体のアクションは、将来的に買収することも意識しつつスタートアップをより大きな企業にまとめ上げていくべく投資する、買収したアフリカ企業の事業拡大を幅広く積極的に助けていく、自らアフリカで起業するなど、立場によって様々だろう。この段階で、将来的にどう永続的に裨益できるのかを見通すかは困難であるが、より添った貢献やそれによる成功事例の積み上げを通じてアフリカと日本の人のつながりを強くしていくことができれば、自然とその方法も見えてくると思う。このエッセーをお読みいただき、なるほどと思った人も、懐疑的に受け止めた人も、懐疑的に受け止めた人はなおさら、一度、アフリカに来てみて欲しい。(以上)

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