ファイナンス 2023年2月号 No.687
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ファイナンス 2023 Feb. 81表現になるかもしれないが、「アフリカは、日本が来ても来なくても成長する」のであり、日本が永続的にアフリカの成長から裨益していくには、例えば、日本の技術を活用したインフラ整備やスタートアップの成功などの日本の貢献による成功事例を先行投資的に積み上げるなどし、日本の側から頑張ってその縁(stake)をできるだけ早く作っていく必要があると考えていることを述べたい。日本人にとってアフリカが遠く、アフリカを無意識に意識の外に置きがちなのと同様に、実は、アフリカの人々にとっても、日本は遠く、日本のことをよく知っているわけではないのだ。まず、「アフリカは、日本が来ても来なくても成長する」という点だが、これについては、アフリカの中長期的な成長は、アフリカの伸びゆく需要を満たそうとする内生的なものであるとが大きい。もちろん、アフリカ諸国のみによる取組では、技術面・資金面、さらには人的資本の面で足りない点が多々あり、日本を含む先進国や新興国などが関与・貢献することは、アフリカの成長のスピードにや質を大きく向上させる重要な要素である。しかしながら、この点については、仮に日本や日本企業がアフリカに来なくても、欧米や新興国の企業等が手助けするものと思われる。また、日本のアフリカでの活動規模の小ささを反映しているのかもしれないが、多くのアフリカの人にとって、日本は車などの商品を通じて想像するものであり、高い技術力があるなどの一般的なイメージはあっても、的確に日本の強み弱みを知っているわけではない。例えば、第1回目でも触れたナイジェリアのラゴスでの埋立事業について、当該事業の担当者は「『世界の色々な技術を探索してみた』上で、技術面ではデンマークに頼ることにした」と言っていたが、当該担当者は、日本が多くの埋立てをしていることすら知らなかった。また、前述のように、弊行の副総裁は、アフリカでの日本企業の動きに感銘を受けたわけであるが、彼は、日本の資本参加先の企業(多くは、アフリカでは名だたる企業である)は認知していたものの、日本企業が資本参画していることなどについては明確には認識していなかった。同僚のアフリカ人によれば、知っている人に頼むのがアフリカのビジネスの基本だということであり、自然体でいけば、日本の関与の程度が低いまま、アフリカは成長していく(アフリカの需要を満たしていく)可能性が高い。よく言われるように、経済発展というのは、経路依存的であって、必ずしも技術的に最も良いものが採用されるわけではなく、アフリカの発展に日本が関与していこうと思えば、それなりに労力をかけて縁(stake)を早期に作っていく必要がある。私としては、今の段階で、頑張って日本の貢献による成功事例を積み上げ、アフリカと日本の人のつながりを構築していけば、アフリカの人々の生活に根差した活動において一定の役割を得ることができ、今後のアフリカ市場から永続的に裨益するようにできるのではないかとの感触を持っているし、何よりも日本企業を含む日本には、アフリカの成長を加速させる力が十分にあると思っている。成長し始めているといっても、アフリカの発展はまだまだこれからであるし、日本の技術力や資金力はまだまだ高く、アフリカのリーダーたちの日本に対する期待もまだまだ大きい。これに加え、アフリカと歴史的なつながりを持つ欧米や、投資が一巡しつつある中国などの活動との対比で考えた場合に、例えば、「アフリカに寄り添う日本」というポジションは潜在的に十分大きいと感じる。さて、実際、どうやっていくのかという点であるが、最近は、シンプルに「アフリカの人々の野心を聞いて、相談に乗り、やれることをやってみる」「それによって成功事例を積み重ねていく」「アフリカの人々と日本の人々のつながりをつくっていく」ということが重要ではと思っている。というのも、知れば知るほど、アフリカの現在置かれている環境は過去のアジアなどと異なっており、「先を見通してから、政策や投資の方針を決める」とのアプローチは難しいと感じる。このため、前述のように「既に起こりつつスタートアップの動きを産業につなげる」というようなボトムアップのアプローチの方が良いのではと思っている。より具体的には、アフリカの発展のために必要な事業を提案できるか否かがアフリカでの成否を分ける重要な要素であるが、それを日本人が自ら行うハードルは高く、「アフリカの人々の野心に頑張って乗ってみる」といった日本人の寄り添う力に賭けるほうが良いのではと思った次第だ。実は、私自身も、アフリカ開発銀行の幹部をはじめとして、様々な方から「アフリカは再生可能エネル

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