ファイナンス 2023年2月号 No.687
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*42) JETRO「日本の直接投資(残高)」 *43) UNCTAD “World Investment Report 2022”. *40) アフリカ開発銀行に、アフリカ域外国が加盟できるようになったのは、1982年であり、日本の加盟は1983年である。なお、アフリカ開発銀行グ*41) 詳細は、下記のホームページをご覧いただきたいが、JICAとの協調融資やアフリカ民間セクターの能力構築等を通じて、アフリカの民間セクター開ループとして譲許的な融資を担うアフリカ開発基金については、設立当初の1974年より域外国の加盟が認められており、日本も原加盟国である。発を促進している。https://www.afdb.org/en/topics-and-sectors/initiatives-partnerships/enhanced-private-sector-assistance-for-africa-epsa-initiativehttps://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/fdi.htmlhttps://unctad.org/web■yer/world-investment-report-2022 80 ファイナンス 2023 Feb.面会をしたことを皮切りに、同11月にアフリカ開発銀行が主催するアフリカ投資フォーラム(African Investment Forum。コートジボワールのアビジャンで開催)に経済同友会を代表して渋澤健氏に参加していただき、日本とアフリカのビジネス関係の強化に向けて、緊密に連携していくとの協力趣意書を締結するに至ったことが背景にある。最後に、アフリカ開発銀行について紹介したい。アフリカ開発銀行は、世界銀行やアジア開発銀行などとともに、主要な国際開発銀行(Multilateral Development Banks)の一つであり、1964年に設立され、西アフリカにあるコートジボワールの首都のアビジャンに本部を構えている。現在は、ナイジェリアで農業大臣を務めていたアキンウミ・アデシナ氏が総裁を務め、「アフリカの電化」、「食料増産」、「工業化」、「地域統合」、「人々の生活の質の向上」を「High 5s」として最優先分野に掲げ、政府や民間事業者への投融資を通じて、アフリカの持続可能な経済成長と社会的発展に貢献している。他の主要なMDBsと比較して特徴的なのは、設立当初はアフリカ諸国のみが加盟国だった(アフリカ以外の国は加盟できなかった)ことであり*40、アフリカの人々が「自分の銀行」として強いownershipを持ち、アフリカの政府関係者や民間事業者に深く根差していることである。例えば、私が面会したとあるアフリカの国の首相は、面会中に、アフリカ開発銀行のことを“our bank”と数回発言していた。また、日本は、ナイジェリア、エジプト、米国につぐ第4位の同行の大株主であり、2006年にはEnhanced Private Sector Assistance(EPSA)という枠組みを*41アフリカ開発銀行に立ち上げるなど、アフリカ開発銀行の民間セクター支援に力を入れている。さらには、アフリカ開発銀行は、アフリカ域外では唯一東京に事務所を設置しており、日本企業の方の相談等を受ける体制を整えている。このため、アフリカ開発銀行は、日本がアフリカでの経済活動を深めていく上では良いパートナー候補であると思う。 3 日本が来ても来なくても成長するアフリカ。今、動き始めることが重要前章で紹介したように、日本のアフリカでの活動は着実に深まっている。ただし、しばしば指摘されるように、現時点での日本のアフリカでの活動規模は、他国と比べてまだまだ小さい。例えば、日本の2021年末の海外直接投資の残高は2兆ドルである中、アフリカへの残高(58億ドル)はわずか0.3%未満*42である。一方、世界からアフリカへの2021年末の直接投資残高は1兆ドルであり、世界全体の残高(454兆ドル)に占める割合は2%強*43である。もちろん、世界平均と同じ程度の投資をすることが各国にとって良いとは限らないが、仮に日本が少しでもアフリカが成長すると想定するのであれば、現在の水準は少なすぎると言えるだろう。アフリカでの日本の活動が伸びない要因としてしばしば挙げられるのが、日本企業の保守性や「アフリカに進出するにしても、もっと後で良いのでは」との待ちの姿勢やリスク回避型の思考である。例えば、前述した日本AFRICA起業家イニシアチブのホームページでは、「日本人にアフリカに来てほしいと思っているアフリカ人は少なくない一方で、アフリカ社会における日本人の存在感は薄い。アフリカとの地理的・意識的な距離感だけではなく、日本企業の保守的な体制が主な原因と思われる」と指摘されている。また、私自身も、アフリカで活躍する日本企業の方々から「本社の理解を得られない」といった悩みをしばしば聞く。短期的な利益の安定や確保を考えれば、アフリカでの活動は不要かもしれないが、将来的に巨大市場に育つことが見込まれるアフリカを成長戦略から除く合理的な理由はないように思える。アフリカでの活動拡大のタイミングが遅れれば遅れるほど、その進出コストは上がり、成功率が下がるであろうことにも留意が必要である。こうしたことを踏まえ、一部の人からは反感を買う

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