ファイナンス 2023年2月号 No.687
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FOREIGNWATCHER 1 前回の復習:変わりゆくアフリカまずは、前回の内容を簡単に復習したい。アフリカについては、「ガバナンスが弱く、ビジネスできない」との意見を聞くことがあるが、その程度については、国によって様々であり、日本企業が多く活動するアジアの国と同程度もしくはより良いガバナンスやビジネス環境の国が多々あることに触れた。ちなみに、つい先日、出席した会議*3において、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、司会者より「2005年に教授が著したThe End of Povertyでは『アフリカは貧しく、ガバナンスが弱い』と書いておられたが、18年経った今、アフリカの現状をどう思うか」と問われ、「それは過去のことである」との主旨の回答をしていた。過去の悪いイメージを払拭していくことは、アフリカがアフリカ外から民間投資を得ていくための課題の一つとなっている。もちろん、そうはいっても、他地域の途上国と同じく、ガバナンスやインフラの弱さには課題があるが、着目すべきなのは、アフリカの人々が、政府の能力が必ずしも高くない中、国の発展に必要な事業を諦めてしまうのでなく、むしろ「政府を待っていても、何も起こらないから、自分たちでやってしまおう」との発想で、民間主導の開発が進んでいることである。その力強さは、例えば、関西空港と同じ程度の大きさの埋め立てを民間が企画・資*1) 本文中の意見、感想等についてはすべて筆者の個人的意見であり、誤りがある場合も執筆者個人に責任がある。また、本稿の執筆にあたっては、アフ*2) ファイナンス令和4年11月号「海外ウォッチャー とりあえず、アフリカに行こう(1)」 *3) Launch of ■rst Africaʼs Macro-Economic Performance and Outlook report(2023). 2023年1月19日に開催。 リカ開発銀行アジア事務所の花尻所長を含む多くの同僚や日本企業の方々から助言をいただいた。この場を借りて御礼申し上げたい。https://www.mof.go.jp/public_relations/■nance/202211/202211l.pdfhttps://www.youtube.com/watch?v=dStBI4RKWcE*1このエッセーは、2021年7月にアフリカ開発銀行に日本等を代表する理事として赴任して以来、見聞きしたり考えたりしたことを2回に分けて共有させていただくものであり、今回は、その第2回目(後半)である。伝えたいことは、第1回目(前半)*2と同様に「アフリカには多くのチャンスがあるので、是非、アフリカに来て欲しい」ということだ。というのも、この1年半あまりの経験から「アフリカに来たことがある人はアフリカにビジネス・チャンスを見出し、アフリカに来たことがない人は過去のアフリカにリスクを見る」傾向にあることを強く感じており、日本が世界の成長センターとなるであろうアフリカと共に成長していくためにも、まずはアフリカに行ったことがある日本人を増やすことが重要だと思っているからだ。前回は、変わりゆくアフリカの現状を中心に記載したが、今回は、その変わりゆくアフリカで日本人や日本企業がどのような活動をしているのかを紹介したい。なお、私自身、アフリカについて学んでいる最中であり、アフリカの状況を偏りなく記載したり、アフリカの将来について断定的な意見を述べることは自分の能力を超えていることは改めて述べておきたい。いずれにせよ、このエッセーが、少しでも読者のアフリカに対するイメージを変えたり、アフリカへ行きたいという気持ちを引き出したりすることにつながれば幸いである。 74 ファイナンス 2023 Feb.アフリカ開発銀行 日本等代表理事 野元 隆章海外ウォッチャーとりあえず、アフリカに行こう(2)*1

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