ファイナンス 2023年2月号 No.687
61/106

86420 *1) インフレ率は、「消費者物価指数」(CPI:米労働省)と、「個人消費支出価格指数」(PCEデフレーター:米商務省公表)がある。本稿のインフレ率は、便宜上、消費者物価指数を用いている。*2) 自分の持ち家を借家と仮定した場合に想定される賃料。*3) Rob Warnock【2022】10▲21357911食品エネルギー財(食品・エネルギー除く)サービス(食品・エネルギー除く)総合2020年5月0.1%135791113579112019(出所)米労働省20202022年12月2022年6月9.1%6.5%135791120212022ファイナンス 2023 Feb. 57大臣官房総合政策課 海外調査係 岩松 大洋偽情報の例はささやかなジョークだが、昨年6月には1981年11月以来となる前年比9%(以降、インフレ率の数値は前年比)を超えるインフレ率を記録し、経済面を賑わせた。そしてインフレ率は今も高い水準を維持し、世界中がその動向を注視している。そこで2023年1回目となる海外経済の潮流では、今なお熱い視線が注がれる米国におけるインフレ率の動向を確認したい。コラム 海外経済の潮流1431.はじめに数ある経済指標のなかでも米国のインフレ率*1は最も注目されている指標の一つだろう。昨年はその高い注目度からか、米国労働省が公表するインフレ率の偽情報が拡散されたほどである(幸いにも筆者はその偽情報を掴まされることはなかった)。2.インフレ率の動向米国のインフレ率は、2019年から新型コロナウィルス流行前の2020年初旬まで概ね2%程度で推移していた。しかし、パンデミックという未曾有の事態が原油などのエネルギー価格の低下を招いた。その結果、インフレ率は一時的に0%程度まで低下し、エネルギー要因による下押しは2021年の初旬まで続いた。2021年に入るとインフレ率は上昇局面を迎えた。経済活動の再開に伴い、エネルギーはインフレ率の上昇要因に転換した。加えて、部品不足などの供給制約が残る中で需要が回復したことで財やサービスの価格も上昇し、2021年末には7%のインフレ率を記録した。そこに追い打ちをかけたのが2022年に発生したロシアによるウクライナ侵略である。これにより原油や小麦などの国際商品市況が高騰し、食品やエネルギーを中心に、既に高水準にあったインフレ率を更に押し上げた。足元のインフレ率は、エネルギーや財の価格上昇圧力が一服したことで鈍化傾向にあるが、依然として高い水準である。特に、住居を含むサービスがその他の項目と比較して大きなインフレ要因となっている。【図表1】消費者物価指数上昇率の推移(前年比%)住宅インフレの背景となる民間賃貸住宅の家賃や住宅価格は、パンデミック以降急速に上昇した。その原因を一概に断定することは難しいが、例えば、パンデミック期における住宅在庫の少なさや、パンデミックにより一時的に減少した世帯数の回復による住宅需要の増加などが指摘されている*3。足元の家賃や住宅価格は、賃貸住宅の空室率の改善3.住宅インフレの動向サービスに含まれる住居のインフレ率は、主に家賃と帰属家賃*2から構成されている。指数全体の約3割のウェイトを占めていることからインフレ率の動向を見通すうえで非常に重要な項目の一つである。米国におけるインフレ率の動向

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る