ファイナンス 2023年2月号 No.687
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*32) ここでの記載は、羽渕(2018)を参照としています。* 1130以上について100bps毎に0.5%加算(出所)Berry et al. (2021)5終わりに本稿はシステム上重要な金融機関について取り上げました。TBTF問題についての経済学的な議論は、植田(2021)の第9章で取り上げられているため、経済学との関連を知りたい読者は同書を参照してください。次回は預金保険および金融機関の破綻処理について取り上げることを予定しています。*31) 例えば、BCBSの下記のRegulatory Consistency Assessment Programmeでは、「Method 2 generally results in higher surcharges 評価基準規模相互連関性短期のホールセール・ ファンディング複雑性クロスボーダーな活動評価指標図表9 Method 2のスコアとサーチャージの関係Method 2 Method 2 スコアサーチャージ(%)システム上重要なCCPについては、決済・市場インフラを担う決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures, CPMI)とIOSCOによって、FMI原則に基づき、CCPへの規制が課されています。FMI原則とは、金融市場インフラ(FMI)が順守すべき原則を示したもので、CPMI-IOSCOによって2012年に公表されました*32。この原則の対象は、システム上重要な資金決済システムやCCPなどとされています。FMI原則では金融市場インフラへのガバナンスや信用リスクなど詳細にルールが定められています。具体的な規制の整備については、CPMIとIOSCOで議論されたルールが、各国の監督機関により法制化されていくというプロセスを経ます(我が国では金融商品取引法および監督指針に落とし込まれます)。FMI原則については、羽渕(2018)が我が国で定番のテキストになっているため、詳細を知り合い読者は同書を参照してください。本稿で説明したとおり、システム上重要な金融機関には、システム上重要な保険(G-SIIs)も存在します。特に金融危機時にはシステミックリスクを防ぐこと等を背景に、AIGの救済がなされたことから、保険のなかにもシステム上重要な金融機関が存在することは明らかです。G-SIIsの認定については、FSBとIAISで議論が進められ、2013年からG-SIIsの認定がなされており、その後定期的に見直しが行われていました。その認定方法はG-SIBスコアと類似性がありますが、保険ビジネスを考慮して各評価基準やそのウェイトが異なっています(図表10を(出所)Berry et al. (2021)OTC デリバティブ想定元本売買目的有価証券及びその他than Method 1」としています。https://www.bis.org/bcbs/publ/d369.pdf規模金融機関向け資産金融機関への負債発行済有価証券短期のホールセール・ ファンディングのスコア有価証券レベル3資産対外与信対外負債係数4.42312.00712.4909.0561.0000.15530.169161.1779.2779.926130より下130-229230-329330-429430-529530-629630-729730-829830-929930-10291030-11291130以上6.5+0.5加算*0.01.01.52.02.53.03.54.04.55.05.5図表8 Method 2の評価指標 50 ファイナンス 2023 Feb.BOX システム上重要なCCPとシステム上重要な保険本稿ではシステム上重要な銀行について焦点を当てましたが、システム上重要な金融機関は銀行だけではありません。服部(2022a)で説明した通り、標準的なデリバティブは、中央清算機関(Central Counterparty, CCP)を通じて清算することが求められています。例えば銀行Aと銀行BがOTCデリバティブ契約を結んだ場合、CCPを通じて清算を行うことになります。この場合、その債権債務関係は銀行Aと銀行Bではなく、銀行AとCCP、銀行BとCCPという形で、CCPに置き換わることになります。そもそも金利スワップは、円ベースだけで想定元本が1,000兆円を超えるマーケットですから、標準的なデリバティブをCCPで清算することを義務付けることで、政府がCCPをシステム上重要な金融機関に変化させたとみることもできるでしょう。Method 2ではバケッティングも異なる点に注意してください。具体的には図表9を用いて、Method 2によるサーチャージを算出しますが、Method 1とは異なり、サーチャージが3.5%を上回ることがある点が確認できます。実際、これまで採用されているG-SIBsのサーチャージは、サーチャージがより厳しいMethod 2に基づく傾向がみられています*31。*32

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