ファイナンス 2023年2月号 No.687
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評価基準規模相互連関性代替可能性 /金融インフラ複雑性クロスボーダーな活動評価指標銀行の数値Sample totalIndicator score(bps)*22) BISの資料の事例をそのまま用いているため、評価基準が古い点に注意してください。(注)ここではBCBS(2014)に基づいているため、2014年時点でのカテゴリーになっている点に注意してください。(出所)BIS規模金融機関向け資産金融機関への負債発行済有価証券決済取引預り資産証券引受OTC デリバティブ想定元本売買目的有価証券 及びその他有価証券レベル3資産対外与信対外負債8,0005÷5,0005,0001,000×10,000=30,000÷800,000×10,000=200÷×10,000=40÷×10,000=150÷20,000×10,000=100÷20,000×10,000=2502,000÷80,000×10,000=300300÷10,000×10,000=125100÷×10,000=200200÷10,000×10,000=100,000÷2,000,000×10,000=50020,000÷100,000×10,000=2,000103754004007550図表5 G-SIBスコアの計算例 46 ファイナンス 2023 Feb.(1)規模(2)相互連関性(3) 代替可能性/金融インフラ(4)複雑性(5) クロスボーダーな活動クロスボーダーな活動とは、当該金融機関がどの程度クロスボーダーの取引を行っているかであり、クロスボーダーの与信・負債の額で捉えます。G-SIBスコアの計算例は次のとおりです*22。図表5を見てもらいたいのですが、まず評価指標の一つである「規模」に着目すると、3列目に2,000と記載されています。この値をSample totalである80,000で割ったうえで、10,000を掛けることで、「規模」のIndicators score(bps)が計算されます。このような計算を「規模」以外の評価指標についても行います。上記を前提に、評価指標の細分類を集約した値が図表6です。この図表は、評価基準毎のキャップを考慮したうえで最終的なスコアを計算することを示しており、G-SIBスコアはその単純平均である282.5bpsと計算されます。この値を用いて、以前提示したバケットの表(図表3)を参照すると、1.5%だけCET1比率の追加が求められることがわかります。前述のとおり、G-SIBsの選定手法の見直しについては3年に1度とされていましたが、2021年11月に、必要に応じて改定される形に変更されました。例えば2018年に公表された改訂版G-SIBs選定手法において変更された箇所は、(1)対外与信・対外負債指標の計算方法の見直し、(2)証券トレーディング指標の3.5 計算事例3.6 G-SIBs選定方法の見直し前述の通り、規模についてはレバレッジ比率を算出する際に用いられるエクスポージャーの合計額になります。相互連関性とは、金融機関がどのように相互に依存しているかであり、ある銀行が破綻した場合、他の銀行にどれくらい伝播するかを捉える指標と解されます。具体的には、金融システム内において、どの程度貸出があるかや、OTCデリバティブの(ネットでみた)時価評価などで捉えられます。代替可能性とは、当該銀行が金融システムについてどの程度他の金融機関に代替されない金融サービスを提供しているかを指す一方、金融インフラは金融市場におけるインフラ的なサービスを提供する度合いになります。例えば、銀行は決済などを担っており、金融機関のインフラを提供しているといえます。代替可能性は、その性質からすると本来は「代替不可能性」と呼ぶべきかもしれません。複雑性とは、当該銀行が行う金融サービスの複雑性を指しますが、中央清算されていないOTCデリバティブの想定元本やレベル3資産(市場価格等に基づき公正価値を計算することが難しい資産)、トレーディング及び売却可能有価証券の額が対象となっています。

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