ファイナンス 2023年2月号 No.687
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(1)The bar for judgmental adjustment to the scores should be high:in particular, judgment should only be used to override the indicator-based measurement approach in exceptional cases. Those cases are expected to be rare.(2)The process should focus on factors pertaining to a bankʼs global systemic impact, ie the impact of the bankʼs distress/failure and not the probability of distress/failure(ie the riskiness)of the bank.(3)Views on the quality of the policy/resolution framework within a jurisdiction should not play a role in this G-SIB identi■cation process.5(4)The judgmental overlay should comprise well documented and veri■able quantitative as well as qualitative information. 543213G-SIBsの選定方法と追加的に求めら*14) 4つの原則は下記の通りですが、詳細を知りたい読者はみずほ証券バーゼルIII研究会(2019)の第7章などを参照してください。 バッファーの区分G-SIBs G-SIBスコアG-SIBスコア530-629430-529330-429230-329130-229+3.5% CET1+2.5% CET1+2.0% CET1+1.5% CET1+1.0% CET1図表3 G-SIBスコアとサーチャージの関係 44 ファイナンス 2023 Feb.3.1 G-SIBsの定義れる資本バッファー3.2  G-SIBスコアとバケッティング・アプローチここから現在の規制において、G-SIBsをどのように選定しているかを議論しますが、前述のとおり、G-SIBsの選定において重要な点は、金融システムへの影響度合いを多面的に考慮している点です。秀島(2021)では、G-SIBsの選定方法については、国際合意に至るプロセスが特に困難であったことを指摘しています。金融危機以降、規制改革が始まったわけですが、Tier1やTier2の定義等についてはバーゼル規制の中で長い歴史があり、制度変更についての経験がありました。しかし、システム上重要な銀行をどのように選定するかは、金融危機以降、初めて真剣にBCBSで検討されたため、より一層その調整が困難になりました。事実、導入時の選定方法が必ずしも完璧ではないことから、現在も定期的に見直されています。非常に重要な点は、銀行の規模のみに立脚してG-SIBsを定義しているわけではない点です。秀島(2021)では、規模だけで評価した場合、中国の銀行が非常に多くなるなど、現在のG-SIBsとはかなり違った顔ぶれになることを指摘しています。また、植田(2022)は、「世界金融危機で見たように、リーマン・ブラザースなどの投資銀行(証券会社)やAIGなどの保険会社でも、またそれほど規模が大きくない金融機関でも金融システムやマクロ経済に大きなコストがかかる場合があり、規模が大きいというよりも、『金融システムの中で重要な位置を占めていること』(systemically important)が、救済のより適切な対象となる条件である」(p.154)としています。すなわち、TBTFを防ぐという意味では、金融機関が潰れた場合、どの程度、金融システムに影響を与えるかが重要であり、その金融機関が有する相互連関性や複雑性などの要因を考える必要があるわけです。G-SIBsを指定するうえで、具体的には、二段階のアプローチが取られています。まず、「G-SIBスコア」と呼ばれる指数を構築します。このように指数に基づきG-SIBsを選定する手法を「指数ベース測定方式(indicator-based measurement approach)」といいます。そのうえで、この指数を各銀行について計算し、図表3のバケットに当てはめることでG-SIBsの判定およびどの程度追加的にCET1比率が求められるかが定められます。このようにバケットを用いる方法を「バケッティング・アプローチ(bucketing approach)」といいます。詳細は後述しますが、G-SIBスコアは、(1)規模(Size)に加えて、(2)相互連関性(Interconnectedness)、(3)代替可能性/金融インフラ(Substitutability/financial institution infrastructure)、(4)複雑性(Complexity)、(5)クロスボーダーな活動(Cross-jurisdictional activity)の5つの評価基準に立脚し指数化されます。例えば、ある銀行のG-SIBスコアが300であった場合、図表3をみると区分は2であり、CET1比率が1.5%追加的に求められることになります。図表3をみると、上限は3.5%である一方、G-SIBスコアが130を下回る場合、G-SIBsではないという判定がなされることが分かります(計算事例は後程確認します)。なお、G-SIBsの判定にあたっては、4つの原則*14に基づき、当局が一定の調整を加えられるようになっています。この背景には、前述の方法だけに則ると、実際にG-SIBsに分類すべき銀行が捉えられない可能性があるからです。これはG-SIBスコアそのものが完

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