ファイナンス 2023年2月号 No.687
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<基準設定主体メンバー>(出所)秀島(2021)より抜粋IOSCOバーゼル委(銀行監督)(証券監督)(保険監督)(会計監督)(決済・市場インフラ)*12) 詳しくはFSBのCharterを参照してください。 *13) 詳細は鈴木(2015)などを参照してください。https://www.fsb.org/wp-content/uploads/FSB-Charter-with-revised-Annex-FINAL.pdfG20首脳サミットG20財務大臣・中銀総裁会議金融安定理事会(FSB)IASBIAIS<国際機関メンバー>IMF世銀BISECCGEMOECDCGFSCPMI(国際金市場のの安定)MC 図表2 G20関連書会合関連図総裁・長官会合(GHOS):報告・指示の関係(指示は逆方向):FSBメンバー(これらのほかに25法域のメンバーが参加)システム上重要な銀行入門ファイナンス 2023 Feb. 432.4  G-SIBsに対する追加的な規制関連についてはIAISが決めており、破綻処理関係についてはFSBが担っています。上記の文脈でいえば、TBTFの問題に関し、G20は、FSBに対して、グローバルのシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)にかかる問題について指示を出しました。この段階では対象は「金融機関」全体であるため、銀行に限ってはおらず、FSBはいわばG-SIFIs対策を担っているといえます。このうち、銀行監督を担うBCBSがシステム上重要な銀行、すなわち、G-SIBsに対する対応を引受け、保険監督を担うIAISがシステム上重要な保険、すなわち、Global Systemically Important Insurers(G-SIIs)に対する対応を引受けた、と整理されます。このように、FSBは、各部門間をまたがる案件を統括する役割を担うとともに、BCBSなど各主体に落ちないような案件を担うことになります。図表2は秀島(2021)より抜粋してきた図ですが、FSBは基準設定主体をメンバーとして含んでおり*12、それらとの調整を行いつつ、G20へ報告を行います(G20から指示を受けます)。冒頭で記載したとおり、システム上重要な金融機関に対する規制については、カンヌ・サミットにおいて、グローバルなシステム上重要な金融機関に関する政策枠組みが合意されました。2011年11月に、BCBSがG-SIBsの選定手法を公表するとともに、FSBがG-SIBsのリストを公表しています。G-SIBsに対する追加的な資本バッファーは、2016年から2019年にかけて段階的に導入され、2019年からはG-SIBsに対して1%~3.5%のバッファーが求められています。一方、D-SIBsに対しては、2012年にBCBSで枠組みが定められました。我が国では、金融庁が国際合意に沿って2015年からD-SIBsを指定しています*13。G-SIBsに指定されるかどうかは対象となる銀行にとって極めて重要な問題です。特に、G-SIBsに指定されると、前述の通り、そもそも破綻する確率を下げるため、追加的にCET1比率が求められることになりますし、監督上の目線も引き上げられます。また、秩序ある破綻を可能にするため、TLAC規制が課されるとともに、再建・破綻処理計画を規制当局へ提出する必要があります。このように、G-SIBsに指定されると、対象となる銀行の行動に大きな制約が生まれます(私の実感では、システム上重要な銀行に指定されることは銀行にとって名誉でもなんでもなく、追加的な制約を生むだけと解釈されています)。TLAC規制についていえば、我が国では3メガバンクと野村ホールディングス(HD)がその対象になっています。また、我が国でD-SIBsに指定された場合でも、D-SIBsバッファーという形でCET1比率の追加が求められるほか、必要に応じてTLAC規制や再建計画の策定といった追加的な規制が課される場合もあります。例えば、我が国では特に欧州でのビジネスが大きい野村HDはD-SIBsでありながらTLAC規制が課されています。また、欧州ではD-SIBsであっても欧州版TLAC規制の対象になるなど、各国によってその状況が異なる点にも注意してください。

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