ファイナンス 2023年2月号 No.687
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資本バッファー最低所要自己資本比率*8) 下記の通り、G-SIBスコアの方法を取り扱っているのはBCBSです。 *9) バーゼル規制のパスポート機能については、服部(2022b)をご参照ください。*10) 1999年に設立されたFSFは銀行・証券・保険についての別々の分野別の監督をすることにより、不整合が生じたり、抜け漏れが生じないかなどの*11) ここでの表現は下記の日銀のサイトを参照にしています。 (出所)金融庁資料より抜粋★数値はいずれも完全実施ベースであり、平成30年10月時点のもの。また、G-SIBsとD-SIBsの両方に指定された金融機関については、G-SIBsバッファーとD-SIBsバッファーのいずれか高い比率が適用される。資本バッファーの種類資本保全バッファーカウンターシクリカル・バッファーG-SIBsバッファーD-SIBsバッファー0.5%~1.5%(金融庁長官が指定)https://www.bis.org/bcbs/gsib/チェックをする調整機能のような役割を担っていましたが、FSBになり、様々な機能が強化されるとともに重要性が非常に大きくなりました。https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g06.htm/「最低所要自己資本比率」と「資本バッファー」バーゼル3(最低比率)本邦において必要となる普通株式等Tier1比率2.5%金融庁長官が別に指定した0%場合は別に指定した比率1%~1.5%(FSBが毎年設定)Tier2その他Tier1普通株式等Tier1総自己資本比率8.0%Tier1比率6.0%普通株式等Tier1比率4.5%G-SIBs/D-SIBsバッファー資本保全バッファーTier2その他Tier1普通株式等Tier1バーゼル3(最低比率+資本バッファー)システム上の重要性に応じて毎年対象金融機関を選定し、水準設定。G-SIBsはFSBD-SIBsは各国当局がそれぞれ選定する。カウンターシクリカル・バッファー信用供与の過熱具合等に応じ、国ごとに水準設定。※本邦では当初0%図表1 各種自己資本比率の階層構造 42 ファイナンス 2023 Feb.2.3 FSBの役割on Banking Supervision, BCBS)が定めた手法に基づき、G-SIBsを特定しています*8。具体的には、まず、主要な銀行について、グローバルで見た金融システムにおける重要な度合いを指数化するうえで「G-SIBスコア」を計算します。そのうえで、このスコアに立脚し、どの程度追加的なCET1比率が求められるかを定めます(その結果はFSBが承認し、公表しています)。その一方、D-SIBsについては、各国当局が定めることになっています。D-SIBsは国際的にはシステム上重要でないものの、国内ではシステム上重要であることから、バーゼル規制のパスポート機能*9などの観点でみれば、各国当局がその基準を決めることに合理性はあるといえます。そもそもFSBとは、財務省や中央銀行・監督当局からなる金融安定化フォーラム(Financial Stability Forum、FSF)*10を前身とし、FSFを強化・拡大するかたちで2009年に設立された組織です*11。2008年の世界金融危機への対応を契機に、G20首脳会合(サミット)が開催されるようになりました。G20の首脳・大臣のリーダーシップの下で金融規制改革が推進される中、第1回G20サミットにてFSFの拡大・強化が求められました。FSBの議長はG20財務大臣・中央銀行総裁会合に出席し、G20に対して金融規制に関し、報告する役割を担います。すなわち、FSBがG20に対して、金融監督当局全体を代表して報告し、指示を受けることになりました。G20から出された指示は、FSBを経由して、BCBSや証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions, IOSCO)、保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors, IAIS)など基準設定主体メンバーとの間で割り振りを決める、あるいは、FSBそのものが担当する形になりました。BCBS、IOSCO、IAISはFSBのメンバーでもありますので、G20から指示があった場合、FSB内で役割分担を相談して決めている、とも言えます。例えば、G-SIBsへの規制はBCBS、保険

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