ファイナンス 2023年2月号 No.687
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令和5年度政府経済見通しについて ファイナンス 2023 Feb. 353. 令和5年度の経済財政運営の基本的態度続いて、政府経済見通しにおける翌年の経済財政政策の基本的な態度について述べる。経済財政運営に当たっては、総合経済対策を迅速かつ着実に実行し、物価高を克服しつつ、新しい資本主義の旗印の下、社会課題の解決に向けた取組を成長のエンジンへと転換し、我が国経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていく。今後とも、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、経済状況等を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行っていく。かかる認識の下、以下の重点分野について、計画的で大胆な投資を官民連携の下で推進する。民主導での成長力の強化と「構造的な賃上げ」を目指し、リスキリング支援も含む「人への投資」の抜本強化と成長分野への労働移動の円滑化、地域の中小企業も含めた賃上げ等を進める。また、科学技術・イノベーション、スタートアップ、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった成長分野への大胆な投資を、スタートアップ育成5か年計画やGXロードマップ等に基づき促進する。さらに、サプライチェーンの再構築・強靱化、企業の国内回帰など、国内での「攻めの投資」、輸出拡大の推進により、我が国の経済構造の強靱化を図る。半導体を始めとする重要な物資の安定供給の確保や先端的な重要技術の育成等による経済安全保障の推進、食料安全保障及びエネルギー安全保障の強化を図る。こども・若者・子育て世帯への支援等の少子化対策・こども政策の充実を含む包摂社会の実現、機動的で力強い新時代リアリズム外交の展開や「国家安全保障戦略」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)等に基づく防衛力の抜本的強化など外交・安全保障環境の変化への対応、地方活性化に向けた基盤づくり、防災・減災、国土強靱化等の国民の安全・安心の確保など「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)に沿って重要政策課題に取り組み、その成果を地方の隅々まで届ける。4.令和5年度の日本経済(見通し)最後に、以上のような政策態度を掲げたのちに見込新型コロナウイルス感染症対策について、ウィズコロナの下、国民の命と健康を守りながら、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る。経済財政運営に当たっては、経済の再生が最優先課題である。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。必要な政策対応に取り組み、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む。政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む。日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。まれる令和5年度の日本経済の姿を概説する。令和5年度については、「3.令和5年度の経済財政運営の基本的態度」に基づき、物価高を克服しつつ、計画的で大胆な投資を官民連携で推進するなど新しい資本主義の旗印の下、我が国経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せるための施策を推進する。こうした取組を通じ、令和5年度の実質GDP成長率は1.5%程度、名目GDP成長率は2.1%程度と民間需要がけん引する成長が見込まれる。消費者物価(総合)については、各種政策の効果等もあり、1.7%程度の上昇率になると見込まれる。ただし、引き続き、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク、物価上昇や供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。具体的な項目別の計数は以下の通りである。コロナ禍からの回復や各種政策の効果、雇用・所得環境の改善が進むことにより、増加する(対前年度比2.2%程度の増)。(ii)民間住宅投資総合経済対策による省エネ支援策など各種政策の効果を通じ、増加する(対前年度比1.1%程度の増)。(1)各項目の見通し(ア)実質国内総生産(実質GDP)(i)民間最終消費支出

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