ファイナンス 2023年2月号 No.687
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内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官補佐(経済見通し担当) 古川 健令和5年1月23日に「令和5年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が閣議決定された。政府経済見通しは、翌年度の経済財政運営に当たって政府がどのような基本的態度をとるのか、及び、それを踏まえて経済はどのような姿になるのかを示した政府文書であり、内閣府が作成の上、財務省の税収見積もり、延いては予算の前提として用いられたのち、予算の国会提出と同時期に閣議決定されることで最終的に政府見解となる。今回の政府経済見通しでは、令和4年度の我が国経済は、コロナ禍からの緩やかな持ち直しが続く一方で、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や世界経済減速の影響を受け、実質で1.7%程度、名目で1.8%程度の成長になると見込まれている。令和5年度については、引き続き世界経済の減速は見込まれるものの、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月28日閣議決定。以下「総合経済対策」という。)の効果の発現が本格化し、「人への投資」や成長分野における官民連携の下での投資が促進されることから、実質で1.5%程度、名目で2.1%程度の民需主導の成長が見込まれる。本稿では、令和5年度政府経済見通しの具体的な内容について紹介する。GDPの内訳項目等の詳細な見通しについては、文末の表を参照されたい。 34 ファイナンス 2023 Feb.1.政府経済見通しの位置づけ政府経済見通しは、政府による公式な経済予測であるのみでなく、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。これは、政府経済見通しが、足もとの経済情勢を適切に踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでいるためである。すなわち、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明する。政府としては、こうした景気の下振れリスクに先手を打ち、我が国経済を民需主導の持続的な成長経路に乗せていくため、「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とする総合経済対策を策定した。その裏付けとなる令和4年度第2次補正予算等を迅速かつ着実に実行し、万全の経済財政運営を行う。こうした下で、令和4年度の我が国経済については、実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.7%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.8%程度となることが見込まれる。消費者物価(総合)については、エネルギーや食料価格の上昇に伴い、3.0%程度の上昇率になると見込まれる。2.令和4年度の日本経済(実績見込み)本年の政府経済見通しによれば、我が国経済は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いている。その一方で、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、我が国経済を取り巻く環境には厳しさが増している。令和5年度 政府経済見通しについて

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