ファイナンス 2023年2月号 No.687
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主税局総務課 税制企画室長 齊藤 郁夫令和5年度税制改正及び防衛力強化に係る財源確保のための税制措置については、令和4年12月16日に「令和5年度与党税制改正大綱」が決定され、12月23日に「令和5年度税制改正の大綱」(以下、政府大綱)が閣議決定された。本稿においては、政府大綱を中心に説明したい。なお、文中意見等にわたる部分は、筆者の個人的見解である。こうした諸課題や個人金融資産等の日本のポテンシャルを踏まえ、令和5年度税制改正においては、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずる。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバル・ミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行う。具体的な改正内容等は、2.~5.のとおりである。最後に、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について政府大綱で決定した内容を6.に記述する。 ファイナンス 2023 Feb. 9(2) スタートアップへの再投資に係る非課税2.成長と分配の好循環の実現(1)NISA制度の抜本的拡充・恒久化措置の創設1.令和5年度税制改正の基本的考え方等大胆な金融政策、機動的な財政政策等により「もはやデフレではない」という状況を創り出してきた一方、四半世紀に及ぶデフレ構造の下、平均賃金やGDPの伸びは主要先進国を大きく下回ってきた。足元では、新型コロナウイルス感染症への対応が引き続き必要なことに加え、少子化の加速、安全保障環境の変化、原材料価格高騰や円安の影響による物価高など、日本経済・財政を取り巻く環境は厳しい。「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」の観点から、NISA制度を以下のように抜本的に拡充した上で恒久化する。(資料1)・非課税保有期間を無期限化するとともに、口座開設可能期間については期限を設けず、NISA制度を恒久的な措置とする。・一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠(「つみたて投資枠」)の年間投資上限額を40万円から120万円に拡充する。・上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設けることとし、「成長投資枠」の年間投資上限額を120万円から240万円に拡充するとともに、「つみたて投資枠」との併用を可能とする。・一生涯にわたる非課税限度額を新たに設定した上で、1,800万円とし、「成長投資枠」については、その内数として1,200万円とする。スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化する観点から、保有株式の譲渡益を元手に、創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップへの再投資を行った場合に、再投資分につき20億円を上限として株式譲渡益に課税しない制度を創設する。(資料2)令和5年度 税制改正(国税)等について

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