ファイナンス 2023年1月号 No.686
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西条エリアの酒蔵並走する電車とクルマ大竹港 79 ファイナンス 2023 Jan.また、当地では全国一の営業距離を誇り、今年で創業110周年を迎える広島電鉄の路面電車が走っています。これまでは津々浦々で走っていた路面電車も車社会の波に押され徐々にその姿を消してきていますが、広島では市民の足として健在です。広島電鉄は昭和20年8月6日の原爆投下から僅か3日後に一部区間で運行を再開するという驚異的な復活を遂げ、その時の遺産でもある被爆車両が今も現役で走っているほか、京都市電などの他地域で活躍していた移籍車両、ドイツから輸入した低床連結車両、そして純国産の低床車両と、さながら「チンチン電車の大博物館」とでも呼べるような賑やかで、どこか懐かしい感じがする風景を作り出しています。なお、全国的に道路の中央に線路が敷かれている地域は少なくなってきていますので、広島市内でご自身が初めて自動車を運転するときは、電停で乗降する乗客の近さや右折の難しさに戸惑うかもしれません。広島市から海岸線を東へ約30km行くと、軍港として発展した呉市に到着します。近代以前はほとんど目立つことのなかった呉市でしたが、明治に入り第二海軍区軍港と鎮守府が置かれることとなり、一気に軍港としての地位を確立し、当時置かれた呉海軍工廠は日本一といわれていました。呉海軍工廠で初めて建造された艦船は「宮古(沖縄県南西諸島の宮古島にちなんで命名)」で、以降、戦艦長門や戦艦大和など数多くの戦艦、駆逐艦等を建造した港として広く知られています。太平洋戦争終結後、これらの諸施設は連合国軍の管理下を経て民間の手に渡り、当時の技術を継承した造船業や鉄鋼業が盛んな街として発展してきました。ちなみに、JR呉駅から歩いて数分のところには、呉市海事歴史科学館「大和ミュージアム」があり、10分の1スケールの戦艦大和(模型)が鎮座しており、その姿には圧倒されます。同館では、呉市の歴史や船舶・航空機の技術発展についても学ぶことができます。また、かつては軍港として栄えた背景から、船乗りの曜日感覚を維持するために金曜日の夕食として必ず出されたカレーが、今では「海軍カレー」と称し市内の多くの飲食店で提供されています。海上自衛隊の護衛艦ごとに作り出された秘伝のレシピが継承され、1店1レシピとして再現されており、お店によって特色がある味付けとなっていますので、海軍カレーを巡っての市内散策もお勧めです。広島市からみて東側を紹介しましたが、反対に広島市から海岸線を西へ約30km進むと石油化学コンビナートのプラントが集積する大竹市に到着します。大竹市は山口県岩国市との県境に隣接し、臨海工業地帯として多数の工場が林立しています。

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