ファイナンス 2023年1月号 No.686
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*1) エビデンスに基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making)のこと。具体的には、(1)政策目的を明確化させ、(2)その目的達成のため本当に効果が上がる政策手段は何かなど、政策手段と目的の論理的なつながりを明確にし、(3)このつながりの裏付けとなるようなデータ等のエビデンス(根拠)を可能な限り求め、「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組を指す。POLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPANPRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 15過去の「PRI Open Campus」については、 財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html(佐々木)政策立案において、いわゆるEBPM*1の重要性が高まっていると思いますし、最近では、政府全体でも推進しています。ただ、実感としては、自分の反省も込めて、まだ道半ばかもしれません。(影山)そうですね。政策の企画立案や実施の可否について検討する際、データがあるかないかで論拠の強さが全然違います。私が今担当している介護は、設立してまだ20年の制度という点と、対面でやる作業が多く、データが蓄積されにくいという点があります。例えば、ある介護サービスが利用者の方の状態の改善につながってるかどうかというのは、これまで定量的なデータが乏しく効果があまり明確でなかったように思います。そのため、どういうことをやったらどういう効果が出たかをデータ化していく作業が始まったところです。これでデータが積み重なってくと、将来的には定量的に介護サービスの効果が見えてくるのではないかと思っています。(内藤)詳しくご説明いただいてありがとうございました。ここまでのお三方のお話を聞くにつれて、皆さんには論研で培った経験や発想が完全に定着しきっていて、当たり前のようにデータや理論と向き合いながらお仕事をされているということが良く分かりました。研修が成功している指標にもなると思いますので、今回伺えた話というのは、研修を設計する立場としてはとても嬉しいことです。政策立案において役に立つ論文というのは定性的なものよりも定量的なものです。介護であれば、利用者の方へのアンケートで得た一次データを使っていたり、実際の動向を定量的に見ているものだったりします。EBPMについてはまだまだ過渡期ですが、気付いたときに現場の調査を行ったり、まだデータがなくても将来に備えデータの用意をお願いしたり、というのを積み重ねていくことが大事だと思います。インタビューにご協力いただきありがとうございました。 77 ファイナンス 2023 Jan.財務総合政策研究所

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