ファイナンス 2023年1月号 No.686
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ファイナンス 2023 Jan. 76 PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 15財務省で働くうえで必要な力は論研で育つか実際のところ、データに基づく政策立案は進んでいるのか(日向寺)なるほど。(内藤)お話を伺って、統計の知見が業務でも大変重要なのだと改めて実感しました。(内藤)みなさんはこれまで財務省や他省庁、海外など多様なフィールドで勤務してきたと思いますが、財務省ではどのような力が特に求められているとお考えですか?(影山)これまでの職務経験の中で、2つ大事だと思うことがありました。1つは分野横断的に様々な事象に対して一定の知識を持っていて、議論が成り立つということ。もう1つは、それに対して自分なりの課題を設定して考えを持っているということ。私は数年間、在フィリピン日本国大使館に勤務していたことがありました。そこでは、フィリピン政府や外交団など様々なカウンターパートと話す機会がありましたが、経済・財政の話に加え、公共事業関係や社会保障関係などの話題についても議論ができるということが一つ強みだったと思います。更に求められていたのは、いわゆる課題設定能力であって、例えばフィリピンの発展において、「今どこにボトルネックがあって、何に着手する必要があるのか」というのを自分なりに考えて議論してみると、それがプロジェクトにつながっていきました。本省では国際機関関連の仕事をする機会もありましたが、そこでも同様に、ある国の経済のボトルネックはどこにあって、何をすれば飛躍的にその後の成長につながるか、というアジェンダを提案していくことが大事だったと思います。結局のところ、課題設定ができると、あとはネットワークや同僚の知識にも助けられながら前に進んでいけるのかなと感じています。そういう点で先ほど言及された論研における合宿での社会保障の講義も、やはり課題設定の仕方を学ぶ良い機会だったと思っています。社会保障等の専門家から、どういうところに問題があるだろうかという意識を持ち、そこに対してどうアクセスして、どう対処していくかという論理的な思考を勉強できたことは、とても良い経験だったと思いました。(内藤)なるほど。課題設定というか、それこそゴールを決めて走っていくというのは、論文を書くときにも似たところがあると感じています。論文を書く際は、自分で考えて課題を設定して、そして仮説を持って逆算して何を解いていけば良いかということを考えながら進めていくところがあるので。今、私は論研を設計する立場ですが、3年前には受ける側でしたので、皆さんの話を聞いて、論研での論文執筆で培った力はその先の職務に役立つのだと思いました。(内藤)昨今、データに基づく政策立案が大事だとよく言われています。一方で、実際に、政策の企画立案に当たって、政治的な調整の中で、どこまでデータに基づく政策立案が行われているでしょうか。15年程度勤務してきた中での皆さんの実感はいかがでしょうか。

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