ファイナンス 2023年1月号 No.686
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「統計」の知見は仕事の中でも今でも生きる(内藤)論研で特にこの科目が、今でも活きているなと思うものは何かありますか?(佐々木)統計学でしょうか。仕事で論文を扱うようなこともあるかと思いますが、概して統計の議論が含まれており、論研等で学ぶ基本的な知識がないと理解すらできないですよね。(日向寺)財務省に入って15年ほど経ち、管理職の色彩が濃くなるにつれて、細かいデータを直接読み解くを踏まえつつではありますが、将来的に政策を立案する際にお知恵をお借りすることができ、幅広い視野を持った若手の研究者の方々にアドバイスをいただけるように、かなり苦心してお願いをしていました。例えば、昨年、生活保護の予算を担当していた際、生活保護の基準額が全国で6区分あるのですが、この区分をいくつにすると有意な差が出てくるのかといった議論をしており、論研が役立ちました。ような仕事とは少し異なる性質の仕事が多くなってきましたが、統計に関する知識は本当に役に立ちました。(内藤)日向寺さんの場合は、論研で学んだ知識が特に仕事に直結して役立つと思っていたのは、課長補佐と呼ばれる業務の中核を担っていくポジションの最初の5年ぐらいだったということでしょうか。(日向寺)そうですね。もちろん、マクロ経済モデルを組めるようなスキルを持っている職員もいて、そういった方はまた別かもしれませんが、一般的な職員であれば若手のうちに特に効果があると思います。たとえば、主税局で海外税制の調査をしていたときに、「海外の事例をまとめて分析する」という指示を上司から受けたことがありました。このとき、論研での経験や知識がなければ、どこから始めてい委のかわからず、意味のある分析を何もできなかったと思います。しかし、論研を受講したことで、Excelなど身近で利用可能なツールを使いつつ、海外の研究論文を読んで意味のある分析ができるようになっているので、業務で実施するハードルが下がりますよね。論研がなければ、分析に当たって海外の研究論文を読もうとは考えなかったように思います。(影山)論研の設計時に一番主眼に置いていたのは、論文を読む力をつけていただくということです。(日向寺)厚生労働省年金局に課長補佐として出向していた時、国会の法案審議における質問対応として消費者物価指数と年金額の分析を行う必要がありました。論研を受けていなければ、心理的ハードルが高くて取りかかるのがなかなか大変だったかもしれません。経済データを使った仕事をする際に、論研での経験は本当に役に立ちました。(影山)私の場合も仕事に直結しているところがあります。政策を企画立案するときに、その方向性が正しいかを確認するには、裏付けとなる論文を国内外から探してくる必要があります。このときに論文を読める力が役立っています。 75 ファイナンス 2023 Jan.

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