ファイナンス 2023年1月号 No.686
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3 ファイナンス 2023 Jan.インフラの復旧に全力で取り組むとともに、防災・減災、国土強靱化へ予算を重点化することで、災害に強い社会を実現してまいります。さらに、国際的な物流が拡大している中、私たちの生活や事業を脅かす不正薬物、銃砲、模倣品など、社会悪物品等が密輸される危険性が高まっています。財務省が所管する税関は、明治5年に「運上所」から「税関」に改称され、昨年で150周年を迎えました。150年の先の新たな時代においても税関の使命を果たせるよう、5年度予算では社会悪物品等の水際取締りのための検査体制の強化を図ったところであり、引き続き国民の皆様が安心して生活できる環境づくりの一翼を担ってまいります。4つ目は、持続可能な制度を将来世代に引き継いでいくことです。岸田政権の発足以降、これまで申し述べたとおり様々な対策に取り組んでまいりましたが、これと並行して大規模な補正予算を措置してきた結果、日本の財政状況は一層厳しさを増しています。5年度予算では、114.3兆円の歳出のうち35.6兆円を借金で賄わざるを得ない状況になっています。毎年の借金の積み上がりである債務残高はGDPの2倍を大きく上回り、諸外国と比較しても突出した水準にあります。健全な財政を将来世代に引き継いでいくことが、今を生きる私たちに課された責任であり、まずは2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向け、財政健全化にしっかりと取り組んでまいります。5年度予算の編成作業においても、安定財源の確保や予算の重点化を通じ、財政健全化に努めてまいりました。先ほども申し上げた防衛力の抜本的強化に関する財源については、歳出改革や税外収入の活用など様々な工夫を先行して行い、それでもなお不足する部分については、税制でのご協力をお願いさせていただきました。また、一般会計予算の3割以上を占める社会保障関係費については、薬価改定などにより、高齢化による増加分相当に伸びをおさめました。さらに、社会保障、防衛以外の予算については、メリハリをつけることで、全体として対前年度で予算の削減を実現しております。他方、財政健全化は一朝一夕で終わるものではありません。とりわけ、人生を支える基盤である医療、介護などの社会保障制度は、受益と負担の観点から粘り強い改革が不可欠です。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造を改め、人生のステージに応じてバランスよくサービスが提供される、全世代型社会保障の実現に向けて取り組んでまいります。例えば、こども政策の一環として、高齢世代にご負担をお願いしつつ、出産育児一時金を現行の42万円から50万円へと大幅に拡充いたします。このように財政健全化や社会保障制度改革を通じ、持続可能な制度を将来世代に引き継いでいく考えですが、同時に、既に存在する巨額の債務残高や毎年度の国債発行を適切に管理していくことも重要な課題です。財務省としては、引き続き国債の買い手である投資家の皆様のニーズを把握するとともに、国民負担を可能な限り抑えるべく中長期的な調達コストの抑制を図ってまいります。最後に、財政を通じて展開される政策は、国民の皆様からの納税で支えられています。デジタル化の進展など、私たちを取り巻く環境は急速に変化しておりますが、このような中においても、納税者の皆様が適切に納税義務を果たすことができる環境づくりに努めてまいります。具体的には、ICTなどを活用しつつ、申告・納付手続の利便性の向上や適正・公平な課税の実現に引き続き取り組む所存であり、税務行政に対する国民の皆様からの信頼に応えてまいりたいと考えております。以上、今後の経済財政運営についての抱負とその主な取組について申し述べてまいりました。日本が直面する課題を一つ一つ解決していくべく、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」との組織理念を胸に、副大臣、政務官、そして総勢7万人からなる財務省職員とともに、全力で職務に邁進していく所存です。本年が皆様にとって良い一年となりますよう祈念しまして、新年の挨拶とさせていただきます。

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