ファイナンス 2023年1月号 No.686
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〈今回のインタビュー対象職員〉右:佐々木邦仁 主計局主査(内閣1、復興)中:日向寺裕芽子 国際局地域協力課地域協力調整室長左:影山昇 主計局主査(厚生労働2)〈図表2〉近年ディスカッションペーパーとして刊行された例● 德田雄大(2022)「税制及び関連政策が経済に与える影響の一般均衡分析:2財からなるDSGEモデルを用いたアプローチ」財務総研DP22A-01(通巻362号)● 伊佐友希(2021)“DemographicEffectsonPrices:IsAgingDeflationary?”,財務総研DP21A-06(通巻359号)● 冨田絢子(2021)「地方独自の子育て政策における市町村間競争と効果」財務総研DP21A-05(通巻358号)当時を振り返って論研の良さとは何か(日向寺)結論として論研はとても良いものでした。私は法学部出身で、学生時代に経済学を学んだことがな分に認識されていない実務の観点を提起することも必要とされ、更なる検証を実施したり、政府が保有するデータに基づき、職員自らが妥当性を検証したりという対応が必要になると考えられます。このためには、論文を自ら執筆した経験があることは政策の企画立案者として極めて重要です。論文を執筆するにあたっては、研究を行う研修生が学識経験者を指導教官として1対1で指導を受けられる体制を整えています。例年、研修が始まる前年の11月ごろから研究テーマの考案に着手し、財務総研に所属する有識者の指導の下で研究計画書を策定した後、4月から正式に論文の執筆を行います。4月下旬には論文の中間発表等を行うとともに、関係者(財務総研幹部、学識経験者等)を集め、6月中旬に論文の合評会を開催するというスケジュールです。なお、論文内容が合格基準に達したもののうち、特に優秀な論文については、財務総研のディスカッションペーパーとして刊行さしており、内部研修にとどまらず、社会に対して有用な知見が共有できるような研究論文を世の中に出せるように、指導教官や論研事務局が日々サポートをしています。5.論研を受講した職員へのインタビューここからは、受講経験がある職員や、過去の論研の設計担当の職員(各々在職15年程度)へのインタビューを通じて、論研がその後の職務にどのように役立っているのかをご紹介します。く、数学も苦手で、当時は本当にコンプレックスでした。しかし、論研で英語で書かれた教科書を使って計量経済学や統計学を学ぶことで大きな助けとなり、その後、英国のLondon School of Economics(LSE)に留学させていただく機会があったのですが、論研で学んだ知識を基礎として現地で勉学に励み、より一段深い知識を蓄えて日本に帰ってくることができました。(佐々木)日向寺さんの回答の通りですが、私も法学部出身だったので、財務省職員として最低限必要とされる経済学の知識を身に付けられたのが非常に良かったです。論研は、最近はやりの「リスキリング/学び直し」の取組とも言えると思いますが、何年も前から実施されているのが素晴らしいですね。同期と一緒に勉強するのも新鮮でした。(日向寺)座学だけではなく、Stataを用いた実証分析の論文執筆もさせてもらいました。具体的には、論文執筆のための研究計画書を作成して最終的に論文を形にするという一連のプロセスを体験しました。特に、分析結果の頑健性の確認等を懇切丁寧に指導教官にご指導いただけたのがよかったです。もちろん、論研での経験は留学だけではなく、業務でもとても役立っています。仕事をしていくにあたって、論研で学習する機会があったおかげで、経済論文を読んで理解出来るようになったのですが、このことは仕事をする上で本当に強みになっています。私は主税局に在 73 ファイナンス 2023 Jan.

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