ファイナンス 2023年1月号 No.686
7/96

ファイナンス 2023 Jan. 2 を訴えてまいりました。現下、非常に厳しい国際情勢ではありますが、こういう時だからこそ、ロシアへの圧力はもとより、エネルギー・食料、国際保健、気候変動、金融のデジタル化といった様々な課題を、世界各国が手を携えながら着実に解決していく必要があると考えております。本年は日本がG7の議長国を務めることになっておりますので、しっかりとリーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。2つ目は、未来に向けた経済成長の礎を築いていくことです。岸田政権では、日本経済を再び成長させるための包括的なパッケージとして「新しい資本主義」を掲げております。これは、気候変動対策のための投資など、従来コストと考えられてきたものを未来への投資と再定義し、社会課題の解決を通じて新たな市場をつくることで、経済成長と持続可能性の二兎の実現を図っていくものです。このような考え方のもと、政府としては、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXなどの重点分野に投資を集中し、社会課題を成長のエンジンにすべく取り組むとともに、その担い手である「人材」、「企業」、「地方」を支える施策を推進していく方針です。まず、企業や地方の担い手である「人材」の育成をしっかりと支援してまいります。岸田政権ではこれまで賃上げを最重要課題として進めてまいりましたが、今後はさらに、労働移動の円滑化と人への投資も併せた3つの課題に一体的に取り組むことで、「構造的な賃上げ」を実現してまいります。人への投資の施策パッケージとして4年度予算、5年度予算を合わせて3,300億円程度の予算を措置し、正規化・転職・リスキリングを支援していくこととしております。また、経済成長とイノベーションを生み出す「企業」、とりわけ全体の99%を占める中小企業の潜在力を高める施策を推進してまいります。予算や財政投融資による資金繰り支援などを通じ、コロナ禍や物価高騰に直面する中小企業の皆様を引き続き支援していくとともに、販路拡大や事業再編、IT導入など、コロナ後を見据えた前向きな挑戦にきめ細かな対応を行ってまいります。さらに、人口減少・高齢化、産業空洞化などに悩む「地方」の活性化も重要な課題であり、長年にわたるこれらの課題解決のためには、デジタル化が重要な鍵となります。4年度第2次補正予算、5年度予算ではデジタル田園都市国家構想交付金により、地方のデジタル実装を加速化するとともに、観光業、農林水産業の振興を図ってまいります。また、地方自治体の重要な一般財源である地方交付税については、5年度予算においてリーマンショック後最高となる18.4兆円を確保いたしました。加えて、新たな投資やイノベーションが成長を促し、所得の向上につながる好循環を生み出すためには、2,000兆円にものぼる家計の金融資産などの「資金」を経済の血液として動かしていくことが重要です。5年度税制改正では、「貯蓄から投資へ」の流れを加速するためNISA制度の抜本的拡充・恒久化を行うほか、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化や資産の早期の世代間移転を促すための措置を講ずることとしております。3つ目は、安全で安心できる社会を実現していくことです。ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮のミサイル問題など、日本の安全保障環境が深刻化する中、国民の生命と財産を守るべくわが国の抑止力と対処力を強化していかなければなりません。今後5年間の必要な防衛力整備の水準を43兆円程度と定めるとともに、5年度予算の防衛関係費については、各事業の実効性や実現可能性を精査しつつ、対前年度比1.4兆円増の6.8兆円と歴史的な大転換とも言える予算措置を行ったところです。また、昨年も日本全国において、地震、大雨、洪水、大雪などの自然災害が多発しました。近年、自然災害は激甚化・頻発化しており、他方でインフラの老朽化が急速に進む中、災害による被害はますます大きくなることが懸念されています。4年度第2次補正予算・5年度予算では、自然災害によって被害を受けた

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る