ファイナンス 2023年1月号 No.686
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令和4年10月6日(木)開催(1)一般的な組織不祥事の原因理解(2)当事者視点に立った不祥事防止策 63 ファイナンス 2023 Jan.最近起こり始めているわけではありません。昔は許されていたことが今では許されなくなっている、ということがあります。例えばセクハラやパワハラは20年前、30年前には日常的に起こっていても、それ自体が問題になっていなかったというだけの話なのです。また、内部告発で表沙汰になるというケースも非常に多い。内部の人でないと知らないことが外部に出ていくのです。不祥事といっても、悪意あるものと悪意なきものがあります。つまり、意図的に悪いことをやってやろうというケースもあれば、うっかりミスとか本人が全く気付かずにやってしまうケースもあるということです。問題の種類・性質は様々です。賄賂もあれば、セクハラもあれば、製品の品質不良もある。これらは全部問題の性質が違いますが、世間ではそれが一括りにされて全部が不祥事と言われるのです。はじめにご紹介いただきました小山でございます。本日は「不祥事防止のツボ」というタイトルでお話させていただきます。「当事者の視点で考える」ということを一つのポイントにしております。当事者には当事者なりにそうやってしまう何かがあるのではないか。そういうことを考えながら、本日お話ししたいと思います。1.組織不祥事の頻発いろいろな不祥事が起きていますが、不祥事自体は組織の不祥事が起きるとマスコミ等でいろいろ言われますが、一般的に、だいたい以下のように解釈されると私は思っています。第一は「利益優先で安全性やコンプライアンス・倫理を軽視した」です。次は「法令に関する知識が足らなかった、あるいは法令を守ろうとする意識がなかった」です。これに類似するものとして「マニュアルに不備があった、マニュアルを守る意識がなかった」もあります。さらに「問題が発覚した際、社内に隠蔽体質があり、隠蔽しようとした」というのもよく聞かれます。つまり、一般的な組織不祥事の原因理解は「この組織は倫理観が低い、あるいはコンプライアンス意識が低い、だからこういった問題が起こるのだ」という解釈になるということなのです。そうなると何が起こるかというと「だからコンプライアンス研修を一生懸命やらないといけない」となる。これが一般的な不祥事の対応策です。私は、これは「第三者の視点」に立った不祥事防止策だと思っています。でも本当にこの理解でいいのでしょうか。企業が不祥事を起こすと、マスコミには「利益優先主義だ」とほぼ必ず言われますが、もしそれが正しいとすると、営利企業でない組織は不祥事を起こさないことになります。しかし、実際には非営利組織でも不2.組織不祥事の解釈講師演題小山 嚴也 氏(関東学院大学学長、経営学部教授)不祥事防止のツボ 〜当事者の視点で考える組織不祥事〜令和4年度  上級管理セミナー

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