ファイナンス 2023年1月号 No.686
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年位 図4 県庁所在地の最高路線価ランキングのうち群馬県図5 馬場川通り(上)と旧桑町(下)の街なみ63707580859095000510151922273237前橋市の順位4247高崎市22位33位22高崎市25位45位ファイナンス 2023 Jan. 54(出所)国税庁路線価から筆者作成(出所)令和4年12月11日に筆者撮影プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。近著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社)高路線価は125万円/m2。新幹線の停車駅である高崎駅を擁する高崎市は188万円/m2で、前橋市の1.5倍だった。令和4年、前橋市の13万円/m2に対し高崎市は46万円/m2と3倍超に差が広がっている。仮に、前橋市に代え高崎市を県代表として最高路線価ランキングを見た場合、群馬県は平成9年に22位、令和4年に25位となる。高崎市の水準を群馬県の最高路線価と考えれば他の都市に比べ大きく順位を下げたわけではない。いいかえれば、前橋・高崎をまとめたエリア単位で街の中心が街道由来の旧市街から駅前に移ったのだ。そのような中、最近は少しずつ再生の兆しがうかがえる。きっかけとなったのが平成28年(2016)に前橋市が策定した前橋ビジョン「めぶく。」である。このコンセプトを受け、令和元年(2019)、前橋市アーバンデザインが策定された。「都市の便利さと自然と暮らす居心地の良さを兼ね揃えたまちづくり」という方向性に基づき、まちなか居住、水辺や道路空間の活用などを含む8つの指針が定められている。こうしたビジョンの官民共有を前提に、推し進めるのは民間主体であることが特長だ。次世代の街がめぶく前橋西武は平成17年(2005)に撤退。店舗は平成19年(2007)に前橋プラザ元気21になった。中心街に今も残る大型店はスズラン百貨店だけである。周辺の商店街はシャッター化が進んだ。官民連携で目を引くのは「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)の取り組みだ。馬場川通りを対象に様々な利活用実験やリノベーション事業を民間委託。成功指標として歩行者通行量を設定し、その達成度合いに応じて委託料が変動するプログラムである。取り組みが奏功し馬場川通りは変わりつつある。そのシンボルが白井屋ホテルのリノベーションである。元は創業300年の老舗旅館でホテルに転換後廃業。本町通りと馬場川通りの高低差を活かした個性的な建物になった。本町通りから見れば地階となる馬場川通りの部分は緑で覆われ、ベーカリーやカフェ「ブルーボトルコーヒー」が入った。周辺には個性的なショップやレストランが集まって来て、その賑わいは桑町通りの一部に及んでいる。思えば明治のまちづくりの中心は機を捉え果敢に挑戦した生糸ベンチャーをはじめとする経営者集団、「前橋二十五人衆」だった。令和の現代、地元起業家を中心とする民間主体の地元愛と資金が原動力だ。これら原動力の下、かつてのシャッター街に次世代の街のビジョンがめぶく様子が見てとれる。

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