ファイナンス 2023年1月号 No.686
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9812(図表1)日本のキャッシュレス支払額と(%)0クレジットカード決済コンビニ決済キャリア決済代金引換後払い決済銀行振込その他の決済手段(図表3)世界のECにおける決済手段(%)0202120252021202520212025全世界北米欧州デジタル/モバイルウォレットクレジットカードデビットカード銀行送金その他BNPL(図表4)BNPLの特徴(図表8)米BNPL大手5社による貸付額(億ドル)300(注)図表1:キャッシュレス決済比率は、キャッシュレス支払額÷民間最終消費支出により算出。(出所) 内閣府「国民経済計算」、日本クレジット協会「クレジット関連統計」、日本銀行「決済動向」、キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」、SBペイメントサービス株式会社「【調査結果】クレジットカード決済に関する利用者の意識調査と決済手段の選び方」、Worldpay from FIS「THE GLOBAL PAYMENTS REPORT 2022」、日本経済新聞電子版「後払いサービス『BNPL』少額決済、審査を簡便に」(2022年7月23日)(出所) 日本経済新聞電子版「三井住友カード、クレカなし後払い決済導入 GMO系と」(2022年6月6日)、日本総研「拡大するBuy Now, Pay Later(BNPL)市場の動向と今後の展望」(2021年4月5日)、THE WORLD BANK「The Global Findex Database 2021」、CFPB「Buy Now, Pay Later:Market trends and consumer impacts」(兆円)1201008060402001回払いや分割払いで支払い・近年、コード決済の増加で決済手段の多様化が進む中で、日本のキャッシュレス決済比率は増加し続けている(図表1)。・EC市場の拡大により、キャッシュレス決済比率は更に上昇していくことが期待できる。EC市場においても、決済手段としてクレジットカードを利用する人が79.1%と最も高いものの(図表2)、世界では、後払い決済サービス(BNPL:Buy Now, Pay Later、以下「BNPL」)という支払手段が広がっていくことが予想されており(図表3)、日本でも注目を集めている。・BNPLの事業者が小売店の請求を代行し、消費者は後日代金を支払うといったビジネスモデルはクレジットカードと類似するが、与信審査が厳しくなく、利息や手数料が原則かからないといった点は異なる(図表4)。消費者にとって、クレジットカードを所有せずとも同様のサービスを受けられることから、クレジットカードを所有することができない若年層や主婦層を中心に利用されている。キャッシュレス決済比率の推移・BNPLは、実店舗やECにおいて、事業者が小売店に代金を立替払いし、消費者が原則手数料を負担することなく、後払いや分割払いで事業者に支払う仕組みである(図表5)。事業者にとっては、加盟店からの手数料受取額と運転資金の調達額との差額が利益となる。近年、欧米諸国を中心に、決済系フィンテック企業が事業を拡大している(図表6)。・欧米ではBNPLサービスの登場により、クレジットカードへのニーズは減少傾向にあり(図表7)、BNPLへのシフトが起こっている。クレジットカードの分割払いには基本的に利息や手数料がかかる一方で、BNPLサービスは一般的に4回払いまで利息や手数料がかからない。BNPLはこうしたクレジットカードのペインポイントを解決する手段であることから、急速なニーズ拡大に至っている。・米BNPL大手5社がBNPLのサービスを通じて提供した貸付額は2021年に242億ドルと2019年の10倍以上になっており、BNPLの利用金額が急増していることを示している(図表8)。一方で、少なくとも1回の遅延損害金を請求された利用者は、2021年に10.5%と、2020年の7.9%から増えており、過剰債務への警戒感も広がっている(図表9)。(図表5)BNPLの仕組み図表2: その他の決済手段は、Yahoo!ウォレット決済、口座振替、電子マネー決済、楽天ペイ(オンライン決済)、Pay-easy(ペイジー)決済、プリペイドカード決済、永久不滅ポイント決済、Apple Pay、LINE Pay、ペイパル、Google Pay、ネットマイル決済、リクルートかんたん支払い、Alipay決済、銀聯カード、その他を指す。図表3:2025年は予測値。消費者実店舗・EC29.524.226.9201820192020クレジットカードコード決済デビットカードキャッシュレス決済比率(右軸)与信管理・請求書送付BNPL事業者決済手数料の支払い立替払い(%)40.030.020.010.00.032.32021電子マネー企業名Klarnaaffirmafterpayオーストラリア商品購入スウェーデン706050402011(図表2)日本のECにおける決済手段(2018年)80(図表6)諸外国の主なBNPLサービス設立(事業開始)(図表7)諸外国のクレジットカード保有率の推移(%)オーストラリア母国市場スウェーデン2005年2012年2015年アメリカアメリカ201420176.62.92.82.01.25.420102040608079.11003540利用できる店舗ネット通販を中心とした各サービスの加盟店。国際ブランド対応も。利用時に携帯電話番号やメールアドレスなどを入力。本人確認書類が必要なサービスも。購買履歴などを活用。少額の一括払いならハードルが低いことも。主流はコンビニ払い。口座引き落としなども。準備審査代金の支払手段支払方法主流は一括払い。数回の分割や定額払いも。2001002020192021Borrower-level late fee rate242832021(図表9)支払が遅延した者の割合2020202020217.9%10.5%決済サービスの多様化海外におけるBNPL 49 ファイナンス 2023 Jan.大臣官房総合政策課 調査員 楠原 雅人/木下 裕也本稿では、諸外国で拡大している後払い決済(BNPL)の日本における成長性について考察する。コラム 経済トレンド103日本におけるBNPLの成長性について

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