ファイナンス 2023年1月号 No.686
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(図 財政制度等審議会「令和5年度予算の編成等に関する建議」(概要))ファイナンス 2023 Jan. 44令和5年度予算は、我が国財政の長年抱えている問題と世界的な環境変化で新たに生じた課題のいずれをも真正面から受け止め、解決していく決意を示したものとすることが必要。「財政に対する市場の信認」を維持し、「将来世代への責任」を果たしていくために不可欠。○財政に対する市場の信認・ひとたび財政運営に対する信認が損なわれれば、市場は鋭く反応し、経済社会に不測の影響を与えかねない。イギリスの混乱を他山の石とし、責任ある財政運営を行っていくことが不可欠。・日本を取り巻く状況も変化しうることに加え、財政状況はイギリスよりも格段に悪いことも直視すべき。仮に、イギリスのように財政運営に対する信認が低下すれば、国債市場や為替市場にも影響が及びかねない。○インフレ・物価高騰等と財政・各国は、コロナ禍での例外モードから脱却し、更にインフレが進行する中で必要な対策を行いつつ、財政状況も考慮しながら、バランスの取れた経済財政運営に向けて試行錯誤を重ねている。・コロナ対策については、今まさに例外から脱却し、平時への移行を図るべき。物価高対策は、低所得者等にターゲットを絞り、メリハリの効いたものとすることが望ましい。例外措置が長く続かないような設計とし、いたずらに延長されないようにしていくべき。○日本経済の成長力と財政・この30年間の日本経済の低迷は、財政政策を含む日本の政策対応の結果でもある。現実を真摯に受け止め、必要な規制・制度改革等とあわせて、歳出全体を通じて「アウトカム・オリエンテッド・スペンディング(成果志向の支出)」を徹底していくべき。・単に財政支出を拡大することで経済成長を図ろうとしても、結果は望みがたい。○PDCAの取組・行政事業レビューシートの更なる改善を図り、予算編成プロセスでも積極的に活用し、予算の質の向上に努めるべき。○将来世代への責任・現状を放置すれば、リスクを増幅させて、将来世代に引き継がせてしまうことともなりかねない。将来世代の利益に思いを致し、責任ある財政運営を取り戻さなければならない。・防衛力強化、少子化対策・こども政策、GX投資などは、日本の将来を左右する大事な課題であり、真に効果のある支出を積み上げていくべき。その上で、これらの施策の充実のために、安易に国債発行に依存せず、安定的な財源を確保していくべき。・債務残高対GDP比を将来に向けて安定的に引き下げていくための重要な条件を整えるべく、まずは、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の確実な達成に向けて取り組むことが必要。令和5年度予算の編成等に関する建議(令和4年11月財政制度等審議会) 財政制度等審議会「令和5年度予算の編成等に関する建議」について 1.社会保障~ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革全世代型:能力に応じて負担し、必要に応じて給付し、持続可能な制度を次世代に伝える「全世代型」への制度改革を急ぐべき。こども・子育て:低年齢期に対する支援の充実等とともに、こどもに負担を先送りすることのないよう安定財源を確保することが必要。医療:ウィズコロナへの移行に向け、各種の特例措置について、検証と見直しを行っていくべき。医療保険制度の見直し(負担能力に応じた負担)、毎年薬価改定の完全実施、「かかりつけ医機能」が発揮される制度整備等の医療提供体制の見直しを実現すべき。介護:利用者負担等見直し、ケアマネジメント利用者負担導入、要介護1・2への訪問介護等の地域支援事業への移行等が必要。雇用:雇用保険の短時間労働者への適用拡大、労働移動円滑化に向けた施策の強化について、検討を進めるべき。生活保護:一般低所得者の消費水準と乖離が生じない形で生活扶助基準を改定するとともに、医療扶助等の適正化を図るべき。2.地方財政・一般財源総額実質同水準ルールの堅持、臨時交付金は事業効果等の公表促進やウィズコロナへ移行する中での縮減・廃止が必要。・デジタル活用による効率化と地財計画への反映、「枠計上経費」の規模・配分方法見直し、交付税特会債務の償還前倒しをすべき。3.防衛・安全保障への理解を深めるため、学術面、実務面の有識者からご意見を伺ったところ、主に以下の指摘。ー複合的な脅威に対抗するため、平時から有事までのあらゆる段階で、シームレスで実効的な防衛態勢を構築することが必要。ー海洋国家であることを踏まえ、有事における具体的事態や戦い方を想定し、重点化・合理化して資源配分を行うべき。・新たな安保戦略等の「三文書」は、複数年度にわたる防衛予算の目途になり、かつ、その規模から、他の経費にも大きく影響。「防衛力整備の水準」の規模(現在の中期防では5年間で約27.5兆円)が、次期中期防において、30兆円を超えて相当程度増額することになれば、それ自体歴史の転換点。これまでの延長線上ではない歳出・歳入両面にわたる財源措置の検討が必要。・有事に国家として立ち向かうため財政余力が不可欠。防衛費は経常的な経費であり、負担を先送りせず、安定財源の確保が必要。・防衛力強化に当たっては、限られた資源の中で、どのような事業に対し、優先的かつ重点的に投資を進めるのか、国民へ説明責任を果たすことが必要。特に、人員のあり方を含めた真に実効的な防衛態勢の構築、費用対効果を踏まえた装備品の選定、「5年以内」の確実な配備に向けた実現可能性の検証等が必要。・防衛産業の維持・成長には、コストの適正評価・価格への反映、調達手続きの見直し、防衛装備移転による市場の拡大が不可欠。I:総論Ⅱ:各論

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