ファイナンス 2023年1月号 No.686
45/96

[19]. Abad, J and A Garcia Pascual (2022)「Usability of bank capital buffers:the role of market expectations」 IMF Working Papers, no 2022/021.[20]. Auer, R., Matyunina, A., Ongena, S. (2022)「The countercyclical capital buffer and the composition of bank lending」Journal of Financial Intermediation 52, 100965.5終わりに今回は資本保全バッファーとカウンターシクリカル・バッファーについて解説をしました。次回は、システム上重要な金融機関への資本賦課について説明します。[5]. 佐藤隆文(2007)「バーゼル2と銀行監督―新しい自己資本比[6]. 白川方明(2018)「中央銀行:セントラルバンカーの経験し[9]. 日本銀行・金融庁(2020)「共通シナリオに基づく一斉スト[14]. みずほ証券バーゼルIII研究会(2019)「詳解 バーゼルIIIに[15]. 吉川健一(2018)「ストレステストに用いるストレスシナリオの定量的評価手法」日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ[16]. 吉藤茂(2020)「図説 金融規制の潮流と銀行ERM―続・金*41) 詳細は下記をご参照ください。 https://www.bis.org/publ/bcbs_nl30.htmhttps://www.fsa.go.jp/inter/bis/20221006/20221006.pdf 資本保全バッファー(CCB)およびカウンターシクリカル・バッファー(CCyB)入門 ファイナンス 2023 Jan. 40参考文献[1]. 池尾和人(2009)「銀行破綻と監督行政」『不良債権と金融危機』慶應義塾大学出版会[2].池尾和人(2010)「現代の金融入門」ちくま新書[3].植田健一(2022)「金融システムの経済学」日本評論社[4]. 吉良宣哉(2016)「国際統一基準行に対する資本バッファー規制の導入について」『金融財政事情』率規制」東洋経済新報社た39年」東洋経済新報社[7]. 陣内了(2022)「合理的バブルの理論(9)―「FED」と「BIS」の論争―」日本経済新聞『やさしい経済学』32−38.[8]. 富安弘毅(2023)「カウンターパーティーリスクマネジメント(第3版)」きんざいレステスト」『日銀レビュー』2020-J-13.[10]. 服部孝洋(2022a)「バーゼル規制入門―自己資本比率規制を中心に―」『ファイナンス』28−39.[11]. 服部孝洋(2022b)「AT1債およびバーゼルⅢ適格Tier2債(BⅢT2債)入門―バーゼルⅢ対応資本性証券(ハイブリッド証券)について―」『ファイナンス』14−24.[12]. 秀島弘高(2021)「バーゼル委員会の舞台裏」金融財政事情研究会[13]. 宮内惇至(2015)「金融危機とバーゼル規制の経済学」勁草書房よる新国際金融規制〈改訂版〉」中央経済社融工学とリスクマネジメント」きんざい[17]. ジョン・アーマー,ダン・オーレイ,ポール・デイヴィス,ルカ・エンリケス,ジェフリー・ゴードン,コリン・メイヤー,ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい[18]. ティモシー・ガイトナー(2015)「ガイトナー回顧録:金融危機の真相」日経BPマーケティング[21]. Basel Committee on Banking Supervision(2022)「Buffer usability and cyclicality in the Basel framework」[22]. Chiarotti, E, A Mathur and A Rajan (2022)「Assessing Basel III:Impact of automatic distribution restrictions on regulatory capital and bank lending」Bank of England, Staff Working Papers.[23]. Favara, G., Ivanov, I., Rezende, M. (2021)「GSIB surcharges and bank lending:Evidence from US corporate loan data」Journal of Financial Economics 142(3), 1426−1443.ファーの有益性が見直されたという側面も指摘できます。図表8にもある通り、カウンターシクリカル・バッファーを正としていた国は、コロナ禍でそのバッファーを低下させています。コロナ禍では我が国でも銀行に対して貸出を促進する政策が様々な形で実施されましたが、例えば、カウンターシクリカル・バッファーが正であった場合、危機時に規制当局がカウンターシクリカル・バッファーを下げることを通じて銀行貸出が抑制されないようメッセージを出すことができます。その意味では、カウンターシクリカル・バッファーを通常時に正にしておくと、危機時に規制当局が取ることができる政策の幅が広がる側面もあります。現在、カウンターシクリカル・バッファーは最低を0%としていますが、ポジティブ・ニュートラルなカウンターシクリカル・バッファーの有効性に関する議論が進んでいます。英国では、2016年に、金融安定政策委員会(Financial Policy Committee, FPC)がニュートラルであるカウンターシクリカル・バッファーを1%にするとアナウンスし、2019年に2%ヘと増加させています。スウェーデンはニュートラルな比率を2%にするなど、このような動きは複数の国で見られています。バーゼル委員会は、「ストレス時に規制バッファー水準への割込みを躊躇する一部の法域の銀行が、当局によってバッファーが明示的に解放されれば、資本を使用して貸出を下支えすることに対してより前向きになるかもしれないといった考えに対処するうえで有用となり得る」、「バーゼル委は、当局が任意にポジティブ・ニュートラルなCCyB比率を設定できることについての有益性を支持し、認識している」などと指摘しています*41(詳細はBCBS(2022)のAnnex 7などを参照してください)。

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る