ファイナンス 2023年1月号 No.686
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*37) ここではアーマー等(2020)等を参照しています。*38) https://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170331-1/02.pdf 資本保全バッファー(CCB)およびカウンターシクリカル・バッファー(CCyB)入門 金融庁・日銀での意思決定【金融庁】CCyB比率変更の方針について関係幹部で決定【日本銀行】CCyB比率変更の方針について機関決定※実務者連絡会は四半期毎、金融庁・日本銀行連絡会については半期毎に開催されるが、臨時にCCyBについて議論する必要があると考えられる場合等、必要に応じて随時開催する(出所)金融庁資料*38金融庁・日銀実務者連絡会(四半期毎)CCyB発動の必要性や措置の内容について議論し認識を共有金融庁・日銀連絡会CCyB発動の必要性や措置の内容について議論し認識を共有金融庁における最終決定金融庁長官が発動内容を決定日本銀行での最終報告政策委員会へ報告ファイナンス 2023 Jan. 38図表7 カウンターシクリカル・バッファーの運用の大枠平時のモニタリング(金融庁・日本銀行)【経済・金融市場】内外経済・金融市場の分析を通じ、市場における過剰な動き、金融システムにおけるリスク要因を把握【金融機関】モニタリングを通じ、過剰なリスクテイクに伴う、将来発生しうるリスクの特定比率の変更を検討する必要がない場合には、金融庁・日本銀行連絡会の議題としない4.2  我が国におけるカウンターシクリカル・バッファーファーとカウンターシクリカル・バッファーを(「部門横断的措置(cross-sectional measures)」に対比して)「随時調整的措置(time-varying measures)」という大枠で整理しているので、関心がある読者は同書の第19章を参照してください。*38カウンターシクリカル・バッファーの非常に重要な特徴は、「規制当局の判断」で、追加的に必要となるCET1比率を0から2.5%まで変化させることができる点です。資本保全バッファーの場合、国際統一基準行に対し一律に2.5%のCET1比率が求められるため、この点は大きな違いといえます。図表7が我が国でカウンターシクリカル・バッファーを変化させるときの流れになりますが、基本的には日銀と金融庁が景気の状況などを定期的にモニタリングし、四半期ごとの「実務者連絡会」においてカウンターシクリカル・バッファーの必要性や措置の内容について議論し、意思決定を行います。その後、改めて日銀と金融庁が連絡会で認識を共有したうえで、金融庁長官が発動内容を決定するというプロセスになっています。います*37。このことは資本面での制約を生み、例えば貸出を減らすことにより、景気を一段と悪化させる可能性を有します。そのような中、規制当局の判断で、例えば景気が悪くなったときに必要となるCET1比率を減らすなどの措置ができれば、上述のメカニズムを防ぐことが可能になります。そもそも資本保全バッファーとカウンターシクリカル・バッファーの導入により緩和しようとしているプロシクリカリティは、直接的には景気に限らない点も重要です。本来的には、金融政策が景気循環に伴う景気の過熱/低迷への政策手段になります。その一方、アーマー等(2020)が指摘しているとおり、金融政策はマクロ経済全体に影響を与える政策手段であり、規制当局は、例えば貸出の過熱感や低迷などについて「より的を絞った政策手段を探してきた」(p.632)側面があります。このような文脈で、資本保全バッファーに加え、カウンターシクリカル・バッファーは、「信用の急拡大を悪化させたバーゼルⅡのリスク・ウエイト型自己資本規制がもつ、景気変動拡大的な側面を中和する必要性から想起されたもの」(p.633)と整理できます。ちなみに、同書ではプルーデンス政策全体において資本保全バッ

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