ファイナンス 2023年1月号 No.686
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2バーゼル規制におけるプロシクリカリ資本バッファー最低所要自己資本比率 資本保全バッファー(CCB)およびカウンターシクリカル・バッファー(CCyB)入門 バーゼル3(最低比率+資本バッファー)ファイナンス 2023 Jan. 30(出所)金融庁資料より抜粋★数値はいずれも完全実施ベースであり、平成30年10月時点のもの。また、G-SIBsとD-SIBsの両方に指定された金融機関については、G-SIBsバッファーとD-SIBsバッファーのいずれか高い比率が適用される。資本保全バッファーカウンターシクリカル・バッファーG-SIBsバッファーD-SIBsバッファー0.5%~1.5%(金融庁長官が指定)*3) CET1の定義については筆者が記載した「バーゼル規制入門」を参照してください。*4) 下記をご参照ください。 https://sites.google.com/site/hattori0819/資本バッファーの種類本邦において必要となる普通株式等Tier1比率2.5%金融庁長官が別に指定した0%場合は別に指定した比率1%~1.5%(FSBが毎年設定)Tier2その他Tier1普通株式等Tier18.0%6.0%4.5%「最低所要自己資本比率」と「資本バッファー」バーゼル3(最低比率)総自己資本比率Tier1比率普通株式等Tier1比率G-SIBs/D-SIBsバッファー資本保全バッファーTier2その他Tier1普通株式等Tier1システム上の重要性に応じて毎年対象金融機関を選定し、水準設定。G-SIBsはFSBD-SIBsは各国当局がそれぞれ選定する。カウンターシクリカル・バッファー信用供与の過熱具合等に応じ、国ごとに水準設定。※本邦では当初0%図表2 各種自己資本比率の階層構造2.1  バーゼル規制における資本バッファー:ティの緩和について3階層構造比率*3を追加的に求めており、これらをまとめて「資本バッファー」と呼ぶこともあります。実務家が記載した既存のバーゼル規制の書籍では比較的簡易的に説明されるところ、本稿では、資本バッファーの考え方を包括的にカバーするとともに、米国における事例やコロナ禍での議論など幅広いトピックを取り上げることを特徴としています。本稿では「バーゼル規制入門」(服部, 2022a)など筆者が記載してきたバーゼル規制の論文を前提とするため、基礎的な知識の確認が必要な読者は同論文をご一読ください。また、筆者がこれまで執筆してきた一連の債券入門シリーズは、筆者のウェブサイトにまとめて掲載してありますので、そちらもご参照いただければと思います*4。服部(2022a)では、国際統一基準行に対して最低限求められる、いわゆる最低所要自己資本比率に焦点を当てました。しかし、国際統一基準行については「資本バッファー」と呼ばれるさらなるバッファーが求められています。「資本バッファー」とは、資本保全バッファー、カウンターシクリカル・バッファー、G-SIBs/D-SIBsバッファーの3本柱で構成されています。このイメージは図表2に示されています。資本保全バッファーとは、ストレス時以外の期間に、資本を厚めにするようインセンティブを与えることで、景気悪化時に貸出等を減らさなくてもよくなることが企図されています。資本バッファーは損失などを通じて金融機関の資本が棄損された場合、その棄損に歯止めをかけるため、当該金融機関に対して、段階的に資金の社外流出制限が課されます。資本保全バッファーにおける重要な点は、国際統一基準行すべてに対して一律に追加資本(CET1比率で2.5%)が求められる点です。CET1比率という観点では国際統一基準行は、そもそも4.5%が求められていますから、CET1比率は合計で7%(=4.5%+2.5%)求められていることになります。一方、カウンターシクリカル・バッファーとは、与信の過熱感などに応じて、政府の判断により、追加的

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