ファイナンス 2023年1月号 No.686
32/96

〈税務行政のデジタルトランスフォーメーション〉〈税のキャパシティビルディング〉●  共同調査、多国間の移転価格税制に関する事前確認(APA)、ICAPなど、既存の多国間における税の安定性ツールの適用から得た経験を、新たなルールの適用に関する安定性を提供するための新しい実務的アプローチの開発に活用する。我々はまた、本会合で公表された「二国間の移転価格税制に関する事前確認マニュアル」に記載のAPAプロセスの改善点を特定するために行われた作業を踏まえ、さらなる研修とキャパシティビルディングの機会を探求することにも合意した。シームレスな税務行政の将来像「Tax Administration 3.0」の公表後、我々は第一段階の作業を終え、第二段階の協力関係を管理するために、以下を含む新しい戦略的枠組みに合意した。●  全てのFTAメンバーが参加できるシニアレベルの専門家作業部会の新設や、デジタルトランスフォーメーションに関する新たなアドバイザリーグループの設置を通じ、外部の主要な利害関係者とのより密接な協力関係を構築する。●  国内のデジタルIDの相互認証に支えられた、シェアリング・エコノミー及びギグ・エコノミーのプラットフォームとの国境を越えたリアルタイムでの情報交換のため、可能な試作版の初期スコープを設定する。●  二つの柱の解決策の実施を支援する新しいテクノロジーツールの活用を模索する。●  世界の55の税務当局が完了した「デジタルトランスフォーメーション成熟度モデル」の推進や、ウェブベースの新しい「税のテクノロジーイニシアチブ目録」の価値を高める詳細なケーススタディの作成を通じて、デジタルトランスフォーメーションに関する知識共有を継続的に支援する。我々はこの数年における税のキャパシティビルディングのための我々の実務的な支援が増加し続けていることを強調した。これには、FTAキャパシティビルディングネットワークの活動、途上国の税務当局のデジタル化支援に関するアフリカ税務行政フォーラム(ATAF)との2021年共同報告書のフォローアップ作業、国連開発計画(UNDP)とのパートナーシップによるデジタル化の課題に焦点を当てた新しい国境なき税務調査官(TIWB)パイロットプログラムの立上げが含まれる。FTA、税に関するOECDグローバル・リレーションズ・プログラム、国際機関、地域のキャパシティビルディングネットワーク及びコミュニティとの間で緊密な連携と協力を確保することの重要性を認識し、我々は、特に以下を通じて、我々が合意した税のキャパシティビルディングの優先事項を支援するためのコミットメントを新たにした。●  税に関するOECDグローバル・リレーションズ・プログラムと連携し、二つの柱の解決策の実施を含む優先順位の高い研修の開発と提供、及び途上国を支援するための関連するツール、ガイドライン、テンプレートの開発を行う。●  TIWB パイロットを含む他の国際的なパートナーとの緊密な協力を通じ、途上国が将来の税務行政に関する作業に参加することにより利益が得られるよう支援を提供する。●  税務当局を結びつけ、資料を共有し、研修を開催することで、キャパシティビルディングを支援する重要なツールであることがパンデミックの際にも実証された、税務当局のための知識共有プラットフォームの継続的な利用・開発。最後に、我々はまもなくOECD税務政策・租税行政センターを去ることになるパスカル・サンタマン氏に心からの感謝を表明した。同氏のリーダーシップは、国際的な租税協力を新たなレベルへと引き上げることに貢献し、国際課税システムの公正さに対する公の信頼を築き、自国の課税ベースを守るための重要で新しい手段を与えてくれた。我々は、シンガポールとギリシャがそれぞれ2023年と2024年の本会合のホストを申し出てくれたことに非常に感謝しており、これらの会合と国際協力が継続していくことを大変楽しみにしている。 27 ファイナンス 2023 Jan.

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る