ファイナンス 2023年1月号 No.686
31/96

第15回OECD税務長官会議ファイナンス 2023 Jan. 26〈二つの柱の解決策の実施と税の安定性〉 *7) 相互協議(Mutual Agreement Procedure)とは、納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認められる場合において、その条約に適合しない課税を排除するため、条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続。OECD事務総長マティアス・コーマン氏が参加したこの本会合は、2002年のFTA設置から20周年を迎え、FTA参加国の長官が直接顔を合わせるのは2019年3月以来初めてとなった。この機会に、過去20年間のFTAの成果を振り返り、参加国間、及び国際機関や地域の税務組織との協力の深化と強化に焦点が当てられた。こうした幅広い協力体制があったからこそ、パンデミックにおける数多くの課題へ対応して行く上で、我々は迅速かつ効率的に結集し、相互に支援し合うことが可能となった。我々はまた、国際課税制度の大幅な改革の実施においても緊密に協力し、その潜在的な可能性を十分に実現できるよう、情報共有と協働のための合同国際タスクフォース(JITSIC)の活動を含め、相互に支援を行ってきた。これには、共通報告基準(CRS)の実施と効果的な利用、情報交換のための共通送受信システム(CTS)の共同開発、画期的な国際コンプライアンス確認プログラム(ICAP)などの新しい税の安定性ツールの導入、相互協議*7フォーラムによるレビューを含む税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの取組の実施、などが含まれる。今年の本会合では、経済界の代表とともに、経済の急速なデジタル化から生じるものを含め、将来起こり得る課題と機会についても議論した。また、我々は、現在の作業プログラムにおける三つの主要分野について深く議論を行い、以下を来期の優先事項として継続して行くこととした。●  経済のデジタル化に伴い生じる課税上の課題に対応するための二つの柱の解決策の執行面での準備、及び適切な税の安定性プロセス。● よりシームレスな課税モデルを支援するための税務行政のデジタル化の進展。● 途上国の税務当局を支援するための更なる税のキャパシティビルディング。税務行政の新しいフォーカス・グループを創設し、今年初め、BEPS包摂的枠組み(IF)において対応する組織と合同会議を開催したことに続き、我々は二つの柱の解決策に関する画期的な合意を成功させるべく、ハイレベルな課題について議論した。我々が合意した内容は以下のとおり。●  標準化された文書化要件など、二つの柱の解決策の実施に関して詳細な実務的及び能力的側面について共に検討を深め、税務当局と企業双方の負担を軽減するため、二つの柱に共通する解決策の提供を支援する新しいテクノロジーツールの利用を検討する。(6)今後のFTAでの優先的取組事項頼においては、よりスムーズで負担感のないシームレスな課税といった納税者サービスの向上が不可欠であることが確認された。特に、社会規範・文化への影響においては、租税教育の有効性に高い関心が示され、学生への教育のみでなく、新社会人等多様なレベルに向けた教育も検討すべきとの意見が出された。次回本会合までの1年間で優先的に取り組むべき事項について議論が行われた。今回の会合で主要なトピックとなった二つの柱の解決策の実施、税務行政のデジタルトランスフォーメーション及び途上国の当局への更なるキャパシティビルディングの支援を、引き続き優先事項として各作業部会で取り組んでいくことに合意した。これらのプロジェクトの進捗状況については、次回本会合で報告される予定となっている。4最終声明会議の締めくくりにあたり、上記議論を総括した最終声明(コミュニケ)が採択された(コラム3参照)。また、次回会合は2023年10月にシンガポールで開催される予定。*7(コラム3)2022年FTA本会合コミュニケ(仮訳)我々、46カ国の税務当局の長官及び代表は、9月28日から30日に、オーストラリアのシドニーで開催された第15回OECD税務長官会議(FTA)本会合に参加した。ホストであるオーストラリア国税庁クリス・ジョーダン長官をはじめ、オーストラリア国税庁の素晴らしいおもてなしとシドニーでの温かい歓迎に感謝したい。

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る