ファイナンス 2023年1月号 No.686
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➢ 2019年3月の第12回FTA本会合(於:チリ)➢ 2020年12月の第13回FTA本会合(オンライン)➢ 2021年8月、アクションプラン公表➢ 2021年12月、「DX成熟度モデル」公表3第15回OECD税務長官会議(FTA)*3) Action 1:税務行政におけるDX成熟度モデル、Action 2:税務に関する先端技術の共有、Action 3:デジタルアイデンティフィケーション、Action 4:国際的な電子インボイスの普及、Action 5:シェア・ギグエコノミーへの対応、Action 6:途上国のデジタル化支援、Action 7:知見の共有DXの方向性及び技術的・組織的な礎を定めるための枠組みである「Tax administration 2030」の公表に向け協調することに合意。報告書では、各国・地域によってデジタル化のステージが異なることを踏まえ、システム化された税務行政がどのような姿となりうるか、その中核となる要素を抽出し描写するとした。ディスカッションペーパーとして「Tax Administration 3.0」が公表され、今後の税務行政におけるDXに関するFTAでの作業の優先分野を特定すること及びロードマップ(アクションプラン)を2021年初めに作成することが承認された。現在の税務行政(Tax Administration 2.0)に対して、Tax Administration 3.0では、納税者が日ごろ利用する業務システムとの連携により、負担感なく正確な納税が可能となるといった世界が描かれている。デジタル・アイデンティティ、電子インボイスの発行、各国間でのDXに係る知見の共有など、FTAでの今後の検討事項(Action)を七つ*3に整理し、アクションごとに随時検討状況を共有することとされた。上記アクションプランにおけるAction 1として、税務行政における現在のDX成熟度を確認するため、また他の税務当局との比較によって自国の位置を理解するために、各国が自己評価を行う「DX成熟度モデル」が作成され、2021年12月に匿名形式で結果が公表された。(1) パンデミック中及びパンデミック後の税の模様務当局の対応 23 ファイナンス 2023 Jan.進国も含めた各国税務当局のキャパシティの向上と実務を担当する職員の能力向上についても課題となっている。以上の背景を踏まえ、今回のFTA本会合においては、上記三つの議題を中心に、以下のような議論が行われた。なお、上記のほか、パンデミック中の税務当局の対応及びパンデミックを経た変化、納税者の自発的コンプライアンスの向上、今後のFTAでの重点的取組事項についても意見交換が行われた。*3新型コロナウイルス感染拡大後の各国税務当局の対応について共有されるとともに、パンデミック後の社会において税務行政が直面している課題や今後の課題について意見交換が行われた。コロナ禍では、納税者個々の実情に即した柔軟な対応が各国で行われてきたが、社会がコロナ前の状況に戻りつつある中、税務当局としても納税者のコンプライアンス意識の向上に取り組むべきであるとの意見が多く出された。また、コロナを契機としてリモートワークやデジタル化が進んだ結果、職員の働き方や税務行政の在り方も変化してきていることが確認された。特に、デジタル化や新しいテクノロジーについては、各国とも税務行政に積極的に導入しており、各国での取組例が共有された。多くの国でパンデミックが職員の数や時間、資金といったリソースをデジタル化への取組により投入するきっかけとなり、人材の育成やスキルの改善を図る良い機会となったようである。さらに、社会のデジタル化は急速に進んでおり、税務当局もこの流れに追いつく必要があるという認識を共有し、新しいテクノロジーやデータ収集・分析を引き続き積極的に活用することで税務当局全体としてのスキル向上に努めるべきとの意見に合意した。参加国が三つのグループに分かれてフリーディス(コラム2) FTAにおける税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する議論の経緯

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