ファイナンス 2023年1月号 No.686
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*1) 気候変動や将来のパンデミックといった中長期的な構造問題がもたらす国際収支上のリスクに加盟国が対応するため、低所得国と脆弱な中所得国等に*2) SDR(特別引出権)は、国際的な流動性を創出するため、IMFが創出し、加盟国に配分する合成通貨。配分されたSDRは、SDR金利を支払うことで米ドル等の自由利用可能通貨に交換可能。新規配分されたSDRは、IMFの全加盟国に対して、出資割合に応じて分配されるため、低所得国に配分されるのは全体の数%に留まる。これを受け、先進国等に配分されたSDRの一部を支援の必要な低所得国等に自発的に融通(チャネリング)する取組が進行中。対する融資を行うことを目的として、IMFに設置された基金。2022年5月に設立され、同年10月より稼働を開始。国際機構課長 木原 大策/国際機構課企画係員 吉田 有希開発機関課長 大江 亨/開発機関課開発機関第一係長 金田 瑞希 13 ファイナンス 2023 Jan.2022年10月12日から10月14日にかけて、アメリカ・ワシントンDCにおいて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された(対面とオンラインのハイブリッド形式)。一連の会議は、本年2月24日以降のロシアのウクライナに対する侵略戦争によって世界経済の抱える困難が深刻化する中で行われた。以下本稿では、各会議での議論の概要を紹介したい。冒頭の世界経済セッションにおいては、ウクライナのマルチェンコ財務大臣の参加を得て、ロシアのウクライナに対する侵略戦争による世界経済への影響等について議論が行われた。日本を含む多くの国がロシアの侵略行為を厳しく非難するとともに、食料・エネルギー不安やインフレ圧力などの困難をもたらしていることを指摘した。特に、食料・エネルギー不安については、最も影響を受けやすい脆弱層への支援が重要であり、IMFの緊急融資制度である食料ショックウィンドウの新設を歓迎し、国際協調を推進していくこととした。また、インフレを受けた先進国の金融引き締めの国際的な波及効果等にも議論が及ぶ中、日本からは特に1G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2022年10月12-13日)今回のG20は、2022年7月15、16日にバリで開催された会議に続く、インドネシア議長下における4回目の大臣・総裁級の会議となった。為替について、変動が急激に高まり極めて憂慮していること、日本も投機による過度な変動に対応するため2011年以来の為替介入を2022年9月に実施したことを説明した。その後、議長総括では、2022年に多くの通貨がボラティリティの増加を伴って大幅に変化したとの認識が書き込まれるとともに、2021年4月の為替相場のコミットメントが再確認された。低所得国等への支援については、IMFの強靱性・持続可能性トラスト(RST)*1について、その稼働を歓迎した。SDR(特別引出権)チャネリング*2における日本の貢献として、既に2021年に配分されたSDRの20%をコミットしており、一部についてはRST・貧困削減・成長トラスト(PRGT)への貢献を既に行ったところ、今回残余の54億ドル相当のSDRをRSTに追加貢献する予定であることを表明した。また、債務問題では、新興国を含むほぼ全ての国が債務問題を前に進める必要性を強調し、従来よりも具体的かつ前向きな内容が盛り込まれたが「1メンバーが異なる見解を有している」との脚注が付された。この他、今回のG20では、非常に困難な情勢にもかかわらず、国際保健、国際課税、金融セクター、コーポレートガバナンス、気候変動、インフラを含めインドネシア議長下のG20の取組を推進できたことは有意義であったと思われる。2G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2022年10月12日)G7については、議長国ドイツの下、同年5月にボンにて開催されて以来の、対面形式での会議となった。2022年IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要

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