ファイナンス 2022年12月号 No.685
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令和4年度 上級管理セミナー ファイナンス 2022 Dec. 41自治体や地域をしっかり「差別化」して、差別化した状況を「可視化」して皆に分かるようにして、その価値を高めて「ブランド化」していくことが地域としても自治体としても重要です。山梨県小菅村はそれができているところです。小菅村は多摩川の源流で、江戸時代は青梅街道沿いでした。2014年に松姫トンネルができて、大月とのアクセスがすごく良くなりました。小菅村は山間の村ですから、林業で木工とかお箸を製造し、農業では清流を利用したわさびやこんにゃくを作っております。(イ)「NIPPONIA小菅 源流の村」小菅村ではNHKでも取り上げられた「NIPPONIA小菅 源流の村」が有名なのですが、これはかつて村で一番立派な建物だったところをホテルに改築したものです。コンセプトとしては「村全体をホテルに」というものです。古民家ホテルなのですが、1泊2食約3万円と確かに高いですが、今の為替レートだと「2食付で200ドルちょっと」となり、外国人観光客からすれば非常に安く感じると思います。(ウ)「源流」をキーワードに交流人口を増やす(1)「多摩川源流大学」小菅村はNIPPONIAができる以前の1987年から「多摩川源流」というキーワードで村づくりに取り組み、交流人口を増やす努力をしておりました。2007年には「多摩川源流大学」というものを打ち出して、東京農業大学とタイアップして、累計2千人の大学生が参加しました。現在では他の大学や社会人にも公開しております。ここで特徴的なのは村民が先生になることです。村民が林業やわさび栽培やそば打ちを教えます。(2)「源流親子留学」2014年からは「源流親子留学」がスタートし、6年間で27家族88人が移住してきております。なおコロナの関係でここ1,2年は外からの留学は受け入れていません。「源流親子留学」で移住してくる場合、親子で来ますので、家探しや仕事探しが必要になるのですが、教育長が一括して窓口になって相談に応じているのが特長です。ここの小中学校は、親子留学がないと学年が成り立たない状況です。学年が10人いたら半分以上が親子留学で来た子供たちなのです。複式学級という問題があって、生徒が8人にまで減ると学年を越えて一緒のクラスになってしまうのですが、小菅村は村長の方針で、どんなに少人数でも複式学級にはしないとしています。複式学級になる場合には、村が予算を付けて先生を雇って対応します。これをしっかりやると子供を持つ親が村から出ていかないのです。中学校ではオーストラリア修学旅行があります。保護者の負担は6万円でそれ以外の費用はすべて村が負担します。これが楽しみで親子留学した家族は中学校まで村に残ってくれるのです。このように地道な努力をしている企業や自治体は、ちゃんと栄えるということなのです。(3)「道の駅こすげ」と周辺施設の連携「道の駅こすげ」には物産館及び地場野菜を使ったレストランがあり、その横に温泉施設ができています。自然に恵まれたところなので、釣りやキャンプ、バイクのお客さんもいますし、登山客もいます。そういう人たちが温泉に入りに来ます。もうひとつ「フォレストアドベンチャー」というフランスで始まった野外遊園施設があって、その施設が「道の駅こすげ」に隣接しているのです。フォレストアドベンチャーに来た人は終わってから温泉に入ったり、食べて帰ったり物を買ったりするのです。さらにRVパークの指定も受けていて、車中泊もできるようになっています。つまり小菅村は、もう一歩先まで努力しているのです。ただ地元の野菜を売っています、温泉あります、だけでなく、もう一歩踏み込んで、ユニークな遊びの施設があるとかRVパークの指定を受けている、といったことが努力の差になるのです。(4)独自のタイニーハウス・プロジェクトまた小菅村には、独自のタイニーハウス・プロジェクトがあります。タイニーハウスという考え方はリーマンショック後、世界的に広まった思想で、小さな家に住み多額の住宅ローンを抱えずに暮らす生き方です。小菅村ではタイニーハウス・プロジェクトに取り組

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