ファイナンス 2022年12月号 No.685
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40 ファイナンス 2022 Dec.は半導体の工場が新たに設立されたりしていますが、県南はまだ発展途上でありMARUKUは主に県南の自治体や企業のIT化を進める事業を行っております。ご覧いただいている集合写真のように、MARUKUには若い人達がUターン、Iターン移住して、設立5年で年商2億円を超える会社に育っております。MARUKUは熊本県内2つ目のオフィスを、熊本八代市の商店街にある古民家ギャラリーに設立しました。広いスペースがあったので、MARUKUの他にもIT企業数社が入居しておりシェアオフィスのようになっております。また県南の芦北町にある廃校を活用したシェアオフィスにMARUKUが声掛けして、熊本出身の人のIT企業が入るようになって、結構こちらも埋まるようになりました。こうして小山さんが山都町にMARUKUというIT企業を設立したことで、八代市や芦北町にも様々なIT企業が移ってくるようになったのです。二番目のビジネス事例として石川県能登町をご紹介いたします。能登町は石川県の能登半島の先端の方にある町で人口1万6千人です。ここは先程触れた『地方消滅』において、石川県で一番消滅可能性が高いとされた自治体です。能登町でマルガージェラートを経営する柴野大造さんは1975年生まれで、四人きょうだいの長男です。奥能登にある標高130メートルの丘の上のある牧場で育ちました。柴野さんは子供の頃は「こんな田舎から抜け出したい」とずっと思っていたそうです。しかし東京農業大学の3年生の時に夏休みで帰省して、自分の家で作っている奥能登の牛乳を飲んで、そのおいしさにあらためてびっくりしたそうです。柴野さんは大学卒業後、あれだけ嫌がっていた奥能登に戻り両親の牧場を手伝いながら、独学でジェラートを作って、マルガージェラート能登本店を2000年に開業しました。でも最初はなかなか売れなくて苦労したそうです。(6)事例2:石川県能登町(ア)奥能登の生乳のおいしさに目覚める(イ)ジェラートのマエストロとの出会い柴野さんはイタリアの本場のジェラートを知りたいと思い、2007年に初めてイタリア旅行に出かけました。その時「イタリアには毎年ジェラート大会が開催されている」と通訳の日本人女性から教えてもらい、2009年から毎年イタリアのジェラート大会に挑戦し続けるのですが、なかなか認められませんでした。そのようなときに柴野さんがジェラ―ト大会で披露した、「液体窒素を使ったジェラートイリュージョン」がジェラートのマエストロの目にとまりました。マエストロから「君は面白い。私のラボに来なさい」と声がかかったのです。そこでレッジョ・ディ・カラブリアにあるマエストロの工房に出向きました。ジェラートの巨匠は柴野さんに「ジェラートにはきちんとした組成理論がある」と水分と糖分の計算式を教えました。それをマスターした後、柴野さんは2017年のイタリアのジェラート大会で優勝し、「世界一のジェラート職人」となったのです。世界一になった時に作ったのは「リンゴとパイナップルとセロリ」のジェラートでした。セロリを入れることに関して、周囲からは大反対されたそうです。でも柴野さんはセロリをほんの少し加えることで消化も良くなるし、結局爽やかさが残る、だから絶対にセロリが必要、とセロリにこだわり、優勝を勝ち取ったのです。柴野さんは、マエストロから「おいしいジェラートを作るために必要な3つのこと」を直伝されました。それは「パッショーネ(情熱)」「アモーレ(愛)」「ファンタジーア(想像力)」だそうです。何かを作るとき、素材とかではなく、ファンタジーア(想像力)が大事だと私も思います。リンゴとパイナップルにセロリを入れたことによって今までにないジェラートができて、それが世界一おいしいと評価されたのですが、こういうファンタジーアが大事なのだなあ、と思います。地方は資本力では負けますので、「カネではなく、頭を使うこと」が本当に大事なことだと思います。ここからは自治体事例のうちのひとつ、人口700人弱の山梨県小菅村についてお話しします。(7)事例3:山梨県小菅村(ア)差別化、可視化、ブランド化が重要

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