プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。近著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社)図4 青葉通り ファイナンス 2022 Dec. 35(出所)令和4年10月30日に筆者撮影のは5,500m2だった。地元の商業活動調整協議会の活動が影響した。「静岡方式」と呼ばれた地元独自の規制があった。中心市街地活性化基本計画にある大規模店舗一覧を整理すると、店舗面積ベースで郊外店のシェアは約65%だが、10,000m2以上の大型店に絞れば50%となり、店舗数では市街地立地が郊外を上回る。平成17年(2005)に出店したセントラルスクエア静岡(核店舗:アピタ静岡店、店舗面積25,250m2)、平成25年(2013)のMARK IS(店舗面積30,000m2)はあるが、中心街には大型店だけでも12万m2を上回り、買い回りの魅力が残っていることがうかがえる。もう1つは中心商店街の取り組みである。特に呉服町名店街が有名だ。石畳やアーケード等のハード整備は他都市と大きく違わない。特長はソフト面にある。例えば平成5年(1993)に一村一品運動ならぬ「一店逸品運動」を始めている。各店がわが店の逸品を定めあるいは開発しアピールする取り組みだ。郊外店にない個性的な逸品が商店街にあることを知らしめた。「ランドオーナー会議」もある。そもそも商店街が郊外のショッピングモールに伍してなお魅力で上回るには、統一コンセプトを踏まえたテナントミックスが必要だ。中心商店街にふさわしい業種をバランスよく揃えなければならない。「呉服町街づくり協定」に実効性が伴うガバナンスも求められる。商店街振興組合は実際に営業する者が加入するケースが多いが、かつての店主が店を閉め、店舗所有者(あるいは地主)としてテナントに賃貸する「ランドオーナー」になったときが問題だ。商店街への関心を失い、不動産利回り優先でテナントの業種を顧みなくなるケースがある。そのうえテナントが商店街全体の集客に無関心だと状況はさらに悪化する。そうした事態に陥らないよう、ランドオーナーと隔月で会議を持ち、場をつくる共同体としての理解を得るようにした。テナントもしくはランドオーナーが商店街振興組合に必ず加入するルール、空き店舗が発生した場合はランドオーナーが商店街に賦課金を支払うルールも規約に定めている。商店街の札ノ辻から本通にかけては再開発が進んでいる。静岡伊勢丹の向かい側には平成30年(2018)札ノ辻クロスがオープン。街の中心にふさわしく中層階にはホールがある。隣の街区には29階建の呉服町タワーがある。平成26年(2014)の竣工。道路に面した低層階は商標施設で8階以上がマンションだ。実際、中心市街地に住む人が増えており、「住まう街化」も進んでいる。居住者が増えれば商店街も潤う。これも静岡の中心街が比較的賑わいを保っている要因と考えられる。今年3月、中心市街地が2040年に目指す姿と方針を示した「葵歴史のまちづくりグランドデザイン」が公表された。歴史文化と都市再生を2大テーマに定め、市民や事業者と一緒にまちづくりを進めるものだ。目指すべき将来像として「歴史とともに暮らす誇りを感じ、ワクワクする『おまち』」が掲げられている。公園と歴史のまちづくり七間町に並行する青葉通りは戦後整備された都市軸である。昭和15年(1940)静岡大火の復興事業の一環だ。中央分離帯は都市公園(都市緑地)で南端の常磐公園と連続している。ここでは毎年11月に開催される「大道芸ワールドカップ」をはじめ様々なイベントが催されている。青葉通りの「お誕生席」には静岡市役所がある。奥の本館は鉄筋コンクリート造4階建、昭和9年(1934)竣工の近代建築で、「あおい塔」と呼ばれるドームが印象的だ。静岡銀行、県庁舎と同じく中村與資平の設計で国の登録有形文化財である。
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