③男性(図表9)男女の結婚、就業、家事育児参加の意思決定モデル1日当たり労働時間の比較日本韓国カナダニュージーランド米国スウェーデン英国ドイツオランダノルウェーフィンランドスペインフランスイタリア(図表11)先進国における男性の (図表12)女性の活躍推進が評価 されている企業の取り組み例コラム 経済トレンド 102ファイナンス 2022 Dec. 31(出所)Goldin,Claudia(2014)「AGrandGenderConvergence:ItsLastChapter」、Goldin,Claudia(2021)「CareerandFamily:Women'sCentury-LongJourneytowardEquity」、YoungjooChaandKimA.Weeden(2014)「OverworkandtheSlowConvergenceintheGenderGapinWages」、大湾秀雄「働き方改革と女性活躍支援における課題ー人事経済学の視点から」「仕事・働き方・賃金に関する研究会:性別役割分業、長時間労働とジェンダーバイアス」(出所)OECD.stat「Balancingpaidwork,unpaidworkandleisure(2020)」、上田淳二・鶴岡将司「仕事・働き方・賃金を巡る変化と課題ー一人ひとりが能力を発揮できる社会に向けて」、各社HP・「男性が仕事、女性が家事・育児」から「男女ともに仕事と家事・育児を行う」という役割意識の変化にあたって、何が必要であるのか検討したい。・Goldin(2014)やChaandWeeden(2014)によれば、米国の労働市場では、高収入の職業では、労働時間が延びるにつれて所得は非線形的に増えていくという特徴が見られる(図表8)。日本では、無限定に働く正規雇用者の早い昇進が、長時間労働へのリターンとなっているとの見方もできるだろう。・男女の結婚、就業、家事育児参加の意思決定モデルを用いて考えると、夫の長時間労働へのリターンが大きく、夫が家事・育児に参加せずに仕事に専念するという選択を取ることが合理的である場合には、妻が本格的に就労しキャリアアップを図ることは困難になる。女性も男性と同様にキャリアを追求することが合理的であるためには、男性が家事・育児に参加できるよう、長時間労働を是正する必要がある(図表9)。(図表8)仕事の種類別労働時間に対する賃金変化賃金・女性の活躍推進にあたって、様々な課題がある中で、本稿では性別役割意識と男性の長時間労働を挙げた。長時間労働への高いリターンが「男性が仕事、女性が家事」という分業特化のメリットを増幅し、各人に性別役割意識を定着させるとともに、企業においても男性の長時間労働を前提とした業務設計が行われ、女性のキャリアアップの大きな障壁となっていると考えられる(図表10)。日本男性の平均労働時間は先進国の中でも高い水準にあり(図表11)、女性の活躍を推進するにあたっては、男性の働き方から変える必要があるであろう。・女性の活躍推進を評価されている企業の取り組みを見ると、テレワークや短時間勤務の整備や、業務の繁忙調整により、仕事と家庭の両立をサポートすることに加え、女性管理職候補の選抜育成といった取り組みも見られる(図12)。企業の経営陣が本気で労働環境の整備および業務の再設計等に取り組み、性別を問わず、一人ひとりが、様々なライフステージに応じて柔軟に働くことを可能にすることで、女性の活躍が促進されることを期待したい。(図表10)長時間労働および 性別役割分担の定着長時間労働に対して高いリターンが発生する仕事柔軟な働き方が可能であり、短時間でも就労が可能な仕事長時間労働に対して高いリターンが発生夫婦間で、一方が仕事に専念し、一方が家事を担うメリットが大きい多くの世帯において、夫が仕事・妻が家事という分業特化を選択性別役割意識の醸成・定着男性が長時間労働をすることを前提とした業務設計(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。Greedy jobsFlexible jobs労働時間0(分)(注)カッコ内の最初の小文字が女性の利得、2番目の大文字が男性の利得を表す。市場労働と家計労働から生み出される利益から労働コストを引いた付加価値合計を、それぞれの外部機会によって決まる交渉力に応じて、配分する。女性結婚・出産①独身もしくは子供は作らず200400離職就業継続家事育児参加参加せず結婚かつ出産した場合、それを契機に離職するか、就業を継続するか(b, B)(女性の利得,男性の利得)(c, C)女性②(a, A)意思決定①意思決定②意思決定③結婚するか、あるい女性が就業継続したは独身のまま子供を場合、男性が家事・産まずにキャリアを育児に参加するか参選択するか加しないか600各雇用環境において、左図の①~③の順に女性および男性が意思決定をする際に、どれが均衡点になるのかを考える。企業名・実績日本アイ・ビー・エム株式会社株式会社 ヨロズ男女雇用均等法が施行される前(b, B)女性の就業機会の改善後就業継続支援策(保育所の整備等)の施行後長時間労働の是正後雇用環境均衡点(d, D)(a, A)(d, D)(c, C)「日経ウーマン」による2020年「女性が活躍する会社ベスト100」1位獲得製造業で初めて「プラチナえるぼし」を2021年に獲得女性の雇用機会は限られているため、多くの女性にとって、独身で働き続けたり、結婚後に就業継続するよりも離職した方が利得は高く(b>a, c, d)、専業主婦として家事に専念する。女性の就業機会が改善すると、結婚しないでキャリアを追求する経済的な利得であるaが上昇し、より多くの人にとってa>b となるため、未婚率が上がる。家事・育児の負担が減ることで女性が就業継続した場合に受け取るc, dの値が上昇し、就業継続を選ぶ人が増える。ただし、長時間労働のリターンが高い場合、男性は家事・育児に参加せず仕事に専念する(D>C)。長時間労働のリターンが低くなることで(C>D)、男性が家事育児に参加し、女性も男性と同じようにキャリアを選択することが可能かつ合理的となる。選択される行動・働いた時間ではなく、アウトプットを評価することを企図した成果主義の徹底や、ダイバーシティー研修といった全社的な意識改革の実施・テレワーク、短時間勤務、裁量勤務等の勤務制度の整備や、企業内保育園の設立により柔軟な働き方を促進・女性管理職候補を選抜し、育成プログラムを提供するとともに、管理職の後任候補に必ず女性を入れて検討し、女性の積極的な登用を実施・本社と工場といった働き方が異なる部門において、無理に勤務体系を統一せず、それぞれにおいてフレックスタイムや時間有給といった勤務制度を整備・仕事が特定の時期に集中しないよう業務プロセスの変革を実施取り組み例女性活躍の障壁(2)男性の長時間労働女性活躍推進に向けた今後の展望
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