ファイナンス 2022年12月号 No.685
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[11]. Fatouh, M, Neamțu, I., Wijnbergen, S.(2021)「Risk-taking and uncertainty:do contingent convertible(CoCo)bonds increase the risk appetite of banks?」 Bank of England Staff Working Paper No. 938.5終わりに本稿ではAT1債とBIIIT2債について取り上げました。国際統一基準行では、資本保全バッファーやカウンター・シクリカル・バッファーなど、追加的な資本賦課が求められています。次回はこれらをテーマに取り上げることを予定しています。[2]. 北野淳史・緒方俊亮・浅井太郎(2014)「バーゼルIII 自己資*35) 「意図的持合」とは、金融機関同士で意図的に持ち合っているケースですが、「その他金融機関等」とは議決権が10%を超える投資先等、「少数出資金融機関」とは保有している議決権が10%以下の投資先になります。AT1債およびバーゼルIII適格Tier2債(B III T2債)入門 参考文献[1]. 神山哲也(2017)「最近のドイツ銀行を巡る課題−訴訟費用,コール条項付永久劣後債のクーポン払い,ビジネスモデルの問題−」『野村資本市場クォータリー』冬号本比率規制 国際統一/国内基準告示の完全解説」きんざい[3]. 小林章子(2020)「ダブルギアリング規制見直しの概要 地域金融機関の将来にわたる健全性の維持と金融仲介機能の継続的発揮を期待」週刊金融財政事情[4]. 服部孝洋(2022)「バーゼル規制入門―自己資本比率規制を中心に―」『ファイナンス』、28−39.[5]. 秀島弘高(2021)「バーゼル委員会の舞台裏」金融財政事情研究会[6]. 吉井一洋・金本悠希・小林章子・藤野大輝(2019)「詳説 バーゼル規制の実務―バーゼルIII最終化で変わる金融規制」きんざい[7]. ジョン・アーマー, ダン・オーレイ, ポール・デイヴィス, ルカ・エンリケス, ジェフリー・ゴードン, コリン・メイヤー, ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい[8]. アナト・アドマティ、マルティン・ヘルビッヒ(2014)「銀行は裸の王様である」東洋経済新報社[9]. Avdjiev, S., Bogdanova, B., Bolton, P., Jiang, W., Kartasheva, A.(2020)「CoCo issuance and bank fragility」 Journal of Financial Economics 138(3), 593−613.[10]. Borio,C., Farag, M., Tarashev, N.(2020)「Post-crisis international ■nancial regulatory reforms:a primer」BIS Working Papers No 859.[12]. McNamara, C., Tente, N., Metrick, A.(2019)「Basel III D:Swiss finish to Basel III」 Journal of Financial Crises 1(4), 81−90. 24 ファイナンス 2022 Dec.服部(2022)では、銀行が銀行株などを保有すると、その銀行が破綻した場合、他の銀行に伝播していく可能性が高まりますから、金融機関が金融株を保有することに規制が課されているという議論を紹介しました。これをダブル・ギアリング規制といいます。AT1債とBIIIT2債は金融機関の資本調達手段ですからダブル・ギアリング規制の対象になっていますが、国際統一基準行と国内基準行で異なる取り扱いがなされています。また、ダブル・ギアリング規制では、国際統一基準行については保有形態が3種類あり(意図的持合、その他金融機関等、少数出資金融機関等)、その形態ごとに取り扱いが異なる点も大きな特徴です*35。具体的な取り扱いついては、国際統一基準行において、当該金融機関との密接性が上がる場合、自己資本控除の度合いが上がる一方、自己資本控除とならない場合、(標準的手法では)リスク・ウェイトが100%という取り扱いがなされています。また、国内基準行については、自己資本控除はないものの、リスク・ウェイトが250%となっています。リスク・ウェイトと自己資本控除の関係については、服部(2022)のBOX 3に記載されているため、そちらを参照してください。ここではAT1債とBIIIT2債に絞り説明をしましたが、ダブル・ギアリング規制全体は非常に複雑なので、その詳細を知りたい読者は金融庁の告示や吉井・金本・小林・藤野(2019)などを参照していただければ幸いです。また、ダブルギアリング規制の最近の見直しの概要については小林(2020)を参照してください。4.2  AT1債およびBIIIT2債のリスク・ウェイトBOX 3 TLAC債本稿ではAT1債とBIIIT2債について取り上げましたが、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)はTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)債も発行しています。これはBIIIT2債と同様、ゴーン・コンサーンの損失吸収力を求めるものですが、TLAC債については預金保険など複雑な論点が多いことから、本稿では紙面の関係上取り上げず、今後の論文で紹介することを予定しています。我が国では、現在、G-SIBsとして指定されている三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループに加え、国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs)の一角に指定されている野村ホールディングスがTLAC債を発行しています。

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