ファイナンス 2022年11月号 No.684
82/92

(マリア像の夕陽)(写真提供:天草市)(﨑津集落)〔﨑津集落〕〔イルカウォッチング〕管内の名所 78 ファイナンス 2022 Nov.2018年7月に世界文化遺産に認定された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。キリスト教の信仰が禁じられた近世日本で、厳しい弾圧の中、神道や仏教など日本伝統の宗教や地域社会と共生しながら独自の信仰形態を守り続けた潜伏キリシタンの歴史が、世界に類を見ないものと評価されました。構成資産には、天草四郎が天草・島原の乱で籠城したといわれる原城跡から、大浦天主堂、長崎県五島列島に点在する潜伏キリシタン集落などの12の資産があり、そこに熊本県から唯一登録されたのが「天草の﨑津集落」です。当時﨑津の潜伏キリシタンで、漁業を生業としていた人たちは、デウスを豊漁の神として崇拝しており、アワビやタイラギの貝殻の内側の模様を、マリアに見立てて崇敬するなど漁村特有の信仰形態が形成され、そうした独特の信心具は大切に保存され、資料館に展示されています。島原半島と天草諸島に挟まれた海域は「早崎海峡」と呼ばれています。この海域に生息しているのがミナミハンドウイルカ(水族館などでよく見るハンドウイルカより一回り小さい)です。イルカは本来餌を求めて広い海域を回遊しているそうですが、早崎海峡のイルカは、遠くへは行かず群れでこの海域を回遊しています。これは、世界的にも珍しいことだそうです。早崎海峡は早い潮流と海底が起伏に富んでおり餌となる小魚が多く生息していること、また、この地域の漁業が一本釣りと素潜り漁を主としていたことで、イルカとの共存が可能であったためと言われています。2019年には、天草市五和町に「道の駅 天草市イルカセンター」がオープンし、地元の漁船が1日5便出航しておりますので、野生のイルカたちにぜひ会いに来てください。

元のページ  ../index.html#82

このブックを見る