ファイナンス 2022年11月号 No.684
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ファイナンス 2022 Nov. 63 *36) スタートアップ企業は、基本的に、既存のインフラ状況を所与としてビジネスモデルを設計している訳だが、例えば、より安定した電力供給や通信網、さらには道路等の交通網があった方が、ビジネスコストが下がり、より効率的にサービスが提供できるほか、ビジネスの規模や幅の拡大も行いやすくなると思われる。ないか*36。こうした動きが成就するか否かを見通すことは難しいし、実際のところ、世界経済の動きなどの外部要因やアフリカ内部の政治状況なども含め多くのアップダウンがあるだろう。しかしながら、こうしたアフリカにおける動きは「所与の条件の中で効用の最適化・最大化を行う」という経済原理に則ったものであるように思えるし、スタートアップ企業の動きは「社会的に付加価値を出すことにより利益を得る」という企業の王道の在り方であるように思え、方向性として間違っているとは思えない。このため、「成長するか否か」よりも、「成長が早いか遅いか」の方が適切な問いではないかというのが、現時点での暫定的な私の見方である。成長パターンが伝統的なものと異なっていることについては、前述の通り、経済原理から離れたものとは思えないことや、学問が後追いの場合も多々あることなどから、個人的には過度に問題視するよりも、とりあえずの特徴としてとらえておけば良いのではないかと思う。仮にアフリカが成長を遂げれば、将来の時点において、アフリカの経済成長モデルとして分析・説明されることになるだろう。今回は、ここまでにしたい。次回は、こうした動きがあるアフリカの中で、日本企業や日本人がどう動いているのかなどを見ていく。実は、この10年において、日本企業が、農業・食糧・通信・インフラといった分野において、アフリカで活動する企業を買収したり、一部出資したりするなどして、アフリカの成長を日本の成長に取り込んでいくための足掛かりを築きつつあるほか、日本人の若者が、アフリカで起業したり、アフリカ向けのベンチャーキャピタルを立ち上げたりするなど、ポジティブな進展が見られる。(以上)

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