ファイナンス 2022年11月号 No.684
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ファイナンス 2022 Nov. 57(写真1)ナイジェリアのラゴスの埋立地に建設中のタワーマンション。(写真2)写真1のタワーマンションの上層階から見た埋立地の様子。 *7) ナイジェリアは、2億人超とアフリカで最大の人口を有する地域大国であり、多くの日本企業も活動する。しかしながら、前述のガバナンス指標で、政府の有効性をみるとアフリカ54か国中37位との評価であり、アフリカの中でも高い方ではない。*8) 「開発」と「発展」は、英語ではともにdevelopmentであり、このエッセーではほぼ同じ意味で用いている。やアジアであれば、公的セクターが主導する場合がほとんどではないだろうか。アフリカでは、こうした大事業を一民間の会社が主導して実際に行ってしまう場合があるのだ。私が訪問した時点で、既に一部の埋立ては終わっており、日本で見かけるのと同じような、3棟のタワーマンションが完成しつつあった。ナイジェリアでは、他にも、大企業が主導する形で道路や住宅を整備する事業が行われている。例えば、西アフリカで最大規模のコングロマリットとされるDangote Groupは、2019年に政府と道路整備に関する取り決めを結び、500キロ超の道路を整備する計画を立てており、既に75キロの道路を完成させている。天然ガス会社のNigeria LNGや農業会社のFlour Mills of Nigeriaも、道路に加え、水道や電気敷設といったコミュニティ開発の事業を自ら積極的に行っているとのことだった。こうした民間が主導する形式での開発は、ナイジェリア以外でも行われている。例えば、ガーナでは、住友商事も参画するCenpower社を訪れる機会を頂いたが、同社のガス発電事業については、ガーナ政府から同社への働きかけでなく、同社がガーナ政府に働きかける形で始まったということだった。この民間主導の開発についてハイライトしたいのは、担当者が、何が何でもやり遂げようとする強い意志をもって実行していることだ。先ほどの埋立事業については、州政府との折衝はかなり大変だったようだが、埋立地を米大使館や英大使館が購入する約束をしてくれていることなどをうまく使うなどして乗り切ったようである。また、道路事業やコミュニティ開発事業の担当者からは、企業の短期的な利害を超えて、目の前にいる人の生活を改善したい、国を発展させたいという国の開発に対する当事者意識(ownership)も強く感じた。つまり、政府の能力が必ずしも高くない中*7、国の発展*8に必要な事業を諦めてしまうのでなく、むしろ「政府を待っていても、何も起こらないから、自分たちでやってしまおう」と考えているのである。こうした「自分たちが何とかする」という当事者意識を持つ人が多いか否かは、国の発展にとって非常に重要な要素だと思う。一方、ここでは、ナイジェリア政府についても「開発を民間に任せる」という大胆かつ現実的な決断をし、実際に必要な事務手続きを進めたことに敬意を表したい。この観点からもう一つ紹介したいのは、ナイジェリアのTony Elumelu財団である。同財団は、銀行等で

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