ファイナンス 2022年11月号 No.684
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*5) United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2022). World Population Prospects 2022, Online *6) UNCTAD. World Investment Report 2022.Edition.雑感 56 ファイナンス 2022 Nov.とらえて、ランキング形式で整理した指標であるが、その2020年版をみると、アフリカで一番よいランクのルワンダは世界で38位であり、スイス(36位)と同じ程度、それに続く、モロッコ(53位)やケニア(56位)はイタリア(58位)と同じ程度であるし、チュニジア(78位)、南アフリカ(84位)、ザンビア(85位)は、インドネシア(73位)やフィリピン(95位)に挟まれる位置にある。なお、いずれの指標でも、スーダンやソマリアなどの国は、アフリカでも、そして世界でも最も悪い部類の評価になっており、日本における「アフリカはガバナンスが悪い」というイメージは、過去にアフリカで頻発した紛争や、現在もそうした状況から抜け出せない一部の国のイメージを引きずっているのではないかと思う。ここで、アフリカが巨大である(アフリカの面積は、アメリカ合衆国、中国、欧州の面積を足し合わせたものよりも大きい)ことも併せて考えてみると、「アフリカはガバナンスが弱く、ビジネスできない」というのは、例えば、「アフガニスタンの情勢がよくないので、インドでは活動できないし、インドネシアへの進出も控える」「ミャンマー情勢が悪いからフィリピンでの活動は難しい」というような粗さの議論に聞こえてこないだろうか。もちろんこうした指標はあくまでも参考にしかならないことはよく承知しており、ガバナンスの状況も含めた実際のビジネス環境は、それぞれの企業が実際にアフリカに来て判断してもらうしかない。ただ、ここで問いたいのは「アジアでビジネスができるのであれば、アフリカでもビジネスをできるのでは」ということである。多くのアジアの国とアフリカの国は、ガバナンスやビジネス環境について粗々の意味で同じ範囲に収まっている上、多くの日本企業は既にそうした状況にあるアジアで活動している。こうした中で、アフリカはガバナンスが悪いといった言説を鵜呑みにしたり、それを思考停止の理由として使って、アフリカを戦略の外側に置いたりし、成長が期待されるアフリカでのビジネスを模索しないのはやはりもったいない。よく指摘されるように、国際連合の推計*5によれば、(1)民間主導の開発、それを支える強い意思一つ目の特徴は、開発プロジェクトについて民間が主導する力が強いということである。この点については、今年の5月に見聞したナイジェリアの事例を中心に紹介したい。ナイジェリアの経済の中心地であるラゴスは、大西洋に面しており、護岸浸食により過去100年で海岸が後退している。これを受けて、約1000万平方メートル(関西国際空港とほぼ同じ広さ)を埋め立て、その土地を再開発する事業が行われているが、その計画・実施を主導しているのは、州政府といった公的セクターでなく、Eko Atlantic という民間の会社である。もちろん、ラゴス州政府やナイジェリア連邦政府は、戦略的パートナーとして関与しているが、資金貢献はしていない。「埋立後の土地の先売りを含めてデベロッパー等に売却することで埋め立て費用を賄い、利益を得る」という全てを民間資金で賄うprivately fundedの設計である。政策面についても、同社が世界中の埋立地の利用に関する規制を自ら研究して規制案を立案して州政府に提出するなど同社が主導する形だ。都市の埋立ては一般に言って大事業であり、日本現在、アフリカの人口は14億人弱であるところ、2050年には25億人に達し、世界の4人に1人がアフリカの人となると言われる。さらに遠い2100年には、アフリカの人口が世界の人口の約4割を占めると推計される。実際のところ、アフリカへの世界からの投資は、急増している。直接投資残高でみれば、2000年には1,530億ドルだったところ、2021年末には1兆ドルに達している*6ほか、後述する通り、アフリカへのスタートアップ企業への投資も急増している。さて、ここでは、昨年夏に赴任して以来、アフリカ諸国を訪れて見聞きした結果として、現時点で私が持っているアフリカの開発の印象について、3つの特徴としてまとめる形で、事例や個人的な雑感とともに紹介する。 2 アフリカ開発の特徴についての

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